本投稿では、現在コンサルで業務プロセス設計およびSAP導入をしている投稿者が、購買管理におけるちょっと特殊なケース、包括契約を扱う場合について解説しております。
この他にも購買管理関連の投稿はこちらにまとめがあります。また、購買管理に限らずSCM関連の記事はこちらのSCM関連記事まとめをご覧になってください。
Agenda
本投稿の想定読者
- SAP導入プロジェクトで購買管理領域を担当されるコンサルタント、システム部門の方
- SCM領域のうち、特に購買管理領域について知りたい方
- 包括契約って何?という方
期待できるメリット
- 購買管理領域における業務プロセスがわかる
- 購買管理領域のプロセスフローのサンプルが見れる
- 包括契約の用途、目的がわかる
包括契約とは
毎回購買要求/発注を作成し、承認を取得するのは面倒
まず初めに、皆さん、購買業務において、購買要求や購買発注を作成する業務、そしてそれらを承認する業務、面倒だなと思ったことはないでしょうか。
例として以下のような業務プロセスがあるとします。これは一般的なものですが、まずは購買要求を作成し、それを承認して、次に購買発注を作成し、そして承認する。こうすることでようやく発注書をSupplierさんに送ることが出来るわけですが、これらのステップを面倒に感じる方は少なくないはずです。
簡便な方法をとっている企業でも、承認取得のためにメールを一本打つ、そのメールにはなぜ購入をしたいのかという理由を書いておく、といったことは必須になっていて、非常に面倒ですよね。
一般購買のケースであればまだいいですが、これが製造業で、製造に使用する原材料や半完成品を購入しないことには製造が行えない、というケースであれば、いちいちこうした購買要求の作成、承認の申請と承認の取得、購買発注の作成、承認申請と承認の取得、などといったステップを踏んでいる余裕はないわけです。
そうしたケースにおいて、包括契約が役に立ちます。
包括契約で事前に承認を取得しておく
包括契約とは、特定のSupplierさんと、年間などの決まった期間でとある製品などを購入することを決めておいた契約を指します。
これを活用すると、事前に決めておいた範囲の購入金額や購入数量であれば、毎回承認取得をしなくても、既に承認取得済みである、という状況にすることが出来、購買業務の簡便化が出来ます。
包括契約には2種類ある
Value ContractとQuantity Contract
この包括契約ですが、2種類あります。
事前にSupplierさんと年間などの期間で購入する全体の金額を合意しておいたものであるValue Contract、そして数量を合意しておいたQuantity Contractです。
この2種類があるということをお伝えすると、Quantity Contractは単価を決めないということなんだな、という誤解を与えやすいのですが、実際にはどちらのケースにおいても購入単価は事前に決定されます。
どちらのケースでも購入単価が決まっているので、Value Contractも、Quantity Contractも、いずれもトータルの購入金額、数量ともに決まっているということになるのですが、社内の購買活動の制御という意味で、Value/金額を使うか、それともQuantity/数量を使うか、という点で違いが出てきます。
Value contract
Value Contractでは、特定の期間で購入する金額を定めました。そして、それを承認済みであるという状況にしています。
よって、日々のオペレーションの中で購買の必要性が出てきたときに、購買発注を作成した場合にその金額をこれまでの購買実績に加えると、Value contractで定めたトータルの購入金額を超えないかどうか?という点で購買発注が承認をスキップしてもよいか、という点が判定されます。
たとえば、金額として年間1000万円が包括契約として承認されている状況で、既に900万円の発注がされているとします。その場合、1点1万円の物品を追加で100点、合計100万円までは承認不要で発注できるのですが、それが101点になると900万円+101万円=1001万円となり、事前に包括契約で承認していた合計1000万円という枠を超えてしまうので、承認が必要になってくる、というわけです。
ここで、承認が必要になるかどうかを判定しているのが金額なので、Value Contractと呼ばれるわけです。
Quantity Contract
では次に、Quantity Contractですが、この場合は特定の期間で購入する数量を決めました。そして、それが承認済みになっています。
もうお分かりかと思われますが、Quantity Contractでは、購入する数量を使用して、新たに購買を使用と思ったときに承認が必要になってくるかどうか、という点が判断されるのです。
包括契約で購買要求の作成、承認をスキップした場合
それでは、包括契約を活用してステップを削減した場合のプロセスフローを見てみましょう。
先ほど表示していたプロセスフローと比べると、非常にシンプルになったのがわかるのではないでしょうか。
いきなり購買発注から始め、そして承認を経ることなく発注書をSupplierさんに送付することが出来ています。
製造業の場合などは特に、製造に活用する部品や原材料などの、頻繁に購買する必要のあるものは包括契約を活用することで必要になったときにはすぐに購買できるように仕組みを整えていることが一般的です。
終わりに
今回は、包括契約を取り扱いました。実際には特殊ケースとはちょっと言えないくらいに一般的なケースかもしれません。
この他にも購買管理のシナリオ、プロセスフローをまとめておきますので、ご興味のあるかたは是非まとめ記事をご覧になってください。