コンサルティングファームの仕事内容に興味を持っている学生さん、社会人の方、いざコンサルティングファームのホームページを見てみても仕事内容が全く分からない、という経験をしたことはありませんでしょうか。 コンサルティングファームの仕事内容って、いまいちわかりにくいですよね。それは仕事内容がそもそもイメージがわかないということに加えて、どんな組織体制になっているのかもよくわからず、また組織の名前にも難しいカタカナ用語が使われていることに起因すると思っています。 そこで今回は、コンサルティングファームを構成する組織について解説していきます。実は、コンサルティングファームには2種類の組織しかありません。あとはそれを細分化しているだけなのです。この点を理解して頂くと、コンサルティングファームの仕事内容によりイメージが持てるかと思います。 なお、先日コンサルティングファームの仕事内容についてざっくりとまとめた投稿を行いました。そちらの投稿はこちらですのでご興味ございましたらぜひご覧ください。
Agenda
想定読者
- コンサルティングファームを志望する学生さん
- コンサルティングファームへの転職を考えている社会人の方
- コンサルティングファームの仕事内容がいまいちわからない方
- コンサルティングファームの組織体制がいまいちわからない方
想定メリット
- コンサルティングファームの組織体制と仕事内容の関係がわかる
- コンサルティングファームのなかでどの組織に入りたいかイメージが持てる
- コンサルティングファームの仕事の進め方、組織同士のかかわりの仕方にイメージが持てる
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コンサルティングファームを構成する2種類の組織
冒頭で軽く触れていますが、実はコンサルティングファームには基本的に2種類の組織しかありません。その2種類とは、セクター/インダストリーチームと、コンピテンシー/ソリューションチームです。 カタカナ用語が早速出てきましたが、セクターあるいはインダストリーと言われているのはつまり業界のことで業界を担当するチームのことを指します。 そして、コンピテンシーあるいはソリューションと言われているのは専門領域のことで、具体的に顧客に提供するサービスに責任を持つチームのことを指します。
セクター/インダストリーチーム
業界を担当するチームである、セクター/インダストリーチームですが、例を挙げると以下のようにさらに細分化されていきます。こうした業界の知見や、各企業の取り組み事例などを詳しく把握しているコンサルタントがいるチームが、セクター/インダストリーチームとなります。 この業界のことだったらなんでも来い!という人たちですね。役割や、どんな仕事内容を持つのかは後程解説します。
- 自動車・製造業(この2つはまとめられていることが多いです)
- 素材・化学
- コンシューマー
- 金融・保険
- 商社(日本ならではの業界わけですね)
- 公共
- 通信・メディア
- エネルギー
コンピテンシー/ソリューションチーム
次に特定の専門領域を担当するコンピテンシー/ソリューションチームにはどんな細分化されたチームがあるか、見ていきましょう。特定のソリューションやサービスの提供に責任を持ち、具体的に実行を支援していく、導入を推進していくといった役割を持つコンサルタントが所属します。 役割や、どんな仕事内容を持つのかは後程解説します。
- サプライチェーンマネジメント
- 財務・会計戦略
- 組織・人事
- IT・デジタル
- M&A
ファームによって、いろいろな分け方をしているケースがあり、例えばIT・デジタルとは別にData Analyticsというチームがいたり、M&AはPre M&AとPost M&AでM&A前と後で分けていたりすることもあります。 また、後程解説しますが、セクター/インダストリーチームが担当をすることが多い戦略策定・リサーチがコンピテンシー/ソリューションチーム側に、経営/事業戦略というチームで存在しているケースなどもありますので、こちらの例はあくまでサンプルとお考え下さい。
セクター/インダストリーチームの役割
業界を担当し、カバーする領域は多岐にわたる
セクター/インダストリーチームのミッションは、業界とその顧客を担当することです。カバーする仕事内容は多岐にわたるため、「この業界のことについてはなんでも来い!」というスタンスが求められます。 例として、製造業のお客様がいたとしましょう。そして、このお客様が以下のような課題を抱えていた、あるいは質問を投げかけてきたとします。
- 日本国内の人件費は高いから、海外に工場を移転するべきかなと思っている。どこに移転すると最も効率的だろうか?
- 社内でのIT活用がうまく進んでいない。そもそも業界全体でうまく進んでいないと思うのだが、今後どういった取り組みをしていくべきか?
- モノを作って売るだけではだめだ。高付加価値なサービスを提供しないと生き残れない。どんなサービスがいいだろうか?
- 長らく利益率が低迷している。業界の中でも高利益な企業になるにはどうしたらいいのか?
こうしたそれぞれ異なる質問に対して、顧客に対して解決までの道筋を示すことがセクター/インダストリーチームには求められます。本当に、カバーする領域が広いということが感覚としてイメージして頂けるのではないでしょうか。
戦略策定、リサーチが主な仕事
先ほどの例で取り上げたように、セクター/インダストリーチームの仕事内容は主に戦略策定・リサーチとなります。したがって、3カ月などの短いスパンで各企業の課題に対して解決策を導き出し、提示するということを繰り返していくことになります。 コンサルティングファームで働いたことのない方からすると、「こんなあやふやで検討範囲の広い課題に対して3カ月で回答を出すなんて無理だ!」と思われる方もいらっしゃると思いますが、業界をうまく分けることでこうした仕事を可能としています。 業界を分けておくことで、過去に類似した課題に取り組んだ事例や知見をコンサルティングファーム内にため込むことが出来るので、A社に対して以前行った戦略策定・リサーチの仕事で検討した項目を参考にしながら、今回仕事を発注頂いたB社の課題に取り組む、といったことが出来るようになるわけです。
企業に対する営業的な役割も担う
コンサルティングファームの中では、セクター/インダストリーチームは営業的な役割も担います。 業界を担当していて、過去から同じお客様に対してサービスを提供してきた経験があるコンサルタントはお客様企業の経営層との関係が構築されていることから、定期的にそうした経営層の方々を訪問し、業界の中でホットなトピックなどを話すようにしています。 たとえば、業界内で起きている業界再編やM&Aなど、特定の企業のアライアンス提携といった新たな取り組みとその効果、海外企業の日本への参入などですね。 こうした会話をするなかで、本格的に仕事が始まりそうなものが見つかった場合、セクター/インダストリーチームが提案内容を固め、プレゼンテーションを行うことで発注を頂き、実際にコンサルティングファームとしての仕事が発生していきます。 最初は、「じゃぁ簡単に、業界内の競合他社がどんな企業を買収しているのか、その背景なんかをリサーチしてもらおうかな」といった程度のお客様からの反応で小さな仕事から始め、次第に仕事内容を大きくしていきます。 「実際にどんな企業を買収していくべきか、その戦略と具体的なプランを作成して頂きたい」、その次には「買収後の統合計画として、人事制度・組織の設計をして頂きたい」、さらには「買収後の効率的な組織運営を行うためのシステムの統合を計画してほしい」というように、お客様から次へ次へと発注して頂けるように取り組むこともセクター/インダストリーチームの役割となります。 以上が、セクター/インダストリーチームの主な仕事内容となります。
コンピテンシー/ソリューションチームの役割
特定のソリューション、サービス提供に責任を持つ
コンピテンシー/ソリューションチームは、特定のソリューション、サービスの提供に責任を持ち、高い専門性を発揮することが求められます。 業界については人によってさまざまな仕事に関わることがあり、前までは製造業メーカーに対してサプライチェーンの効率化の仕事をしていた人が今度は素材メーカーに対して仕事をする、ということがあります。 業界は変わったとしても、「この領域であればだれにも負けない!」というコンサルタントが所属しています。 例として、サプライチェーンのチームが担当する仕事内容、お客様の課題を以下に挙げます。
- 血液検査に使用する検査薬の需要予測の精度が悪いので需要予測の手法を見直したい(医療機器メーカーのお客様)
- 自動車の販売ディーラーや整備工場へ部品を補充するうえでコスト最適な物流計画を作成したい(自動車製造メーカーのお客様)
- 国内の物流網の見直しを行い、新たに倉庫を持つべき拠点を特定したい(流通・卸業のお客様)
- 廃棄が多いので、需要予測、在庫管理、物流含めて全体的に見直しを掛けたい(スーパーマーケットのお客様)
取り扱う課題は幅広く、業界も様々ではありますが、専門領域ごとにチームを分けていることで過去の事例などをため込むことが出来るため、かつてC社に提供したサービスを応用してD社にも提供していこう、ということが出来るわけです。
業務改善・トランスフォーメーション、システム・IT・デジタル技術導入がメイン
仕事内容としては、特定の専門領域を生かすということもあり、具体性が強い内容になります。 したがって、業務改善・トランスフォーメーション、システム・IT・デジタル技術導入の仕事がメインとなります。セクター/インダストリーチームが道筋を示すのであれば、コンピテンシー/ソリューションチームは具体的な実行をお客様と一緒に進めていくという役割を持ちます。 取り扱う内容によって様々ですが、コンピテンシー/ソリューションチームの仕事内容は具体的にお客様の仕事内容や、組織、取り組みを変えていくということになるので、関係する部門も経営層だけではなくなり現場の営業、マーケティング、製造、物流など多岐にわたることになります。 そのため、プロジェクトの期間も半年から長いものだと2年、3年になったりと長いスパンでお客様と一緒にゴールに向かって進んでいくことになります。 ちなみにこうした特性から、次第にコンピテンシー/ソリューションチームのコンサルタントが特定の業界に関する知識を身に着けるようになり、セクター/インダストリーチームへと転籍する、というケースもよくあります。
コンサルティングファームは基本的にマトリクス型の組織
業界×ソリューション/サービス
コンサルティングファームの組織は、ここまででご説明してきたセクター/インダストリーとコンピテンシー/ソリューションの2種類の組織によるマトリクス型となっています。つまり、業界とソリューション/サービスということです。 コンサルタントごとにセクター/インダストリーとコンピテンシー/ソリューションのどちらの所属なのか、という点は明確にされており、ある時点では例えばエネルギー業界向けのIT・デジタル関連の仕事をしているコンサルタントであっても、コンピテンシー/ソリューションの所属であれば在籍するチームはIT・デジタルであり、仕事が変われば別の業界の仕事をすることになります。
新卒入社や年次の浅いコンサルタントは無所属/プールという扱いも
特定の業界の知見もまだ身についていないし、専門領域も持っていません、という新卒入社の方や、年次の浅い中途入社の方は特定のセクター/インダストリーとコンピテンシー/ソリューションのいずれのチームにも属さない、という扱いにしているケースが一般的です。 しかしながら、入社の時点では希望などをお聞きして興味のある仕事が割り当てられるようになっています。 そして、経験を積んでいく中でセクター/インダストリーとコンピテンシー/ソリューション、どちらの所属で、またその中でも細分化された単位ではどのチームに所属するのか、ということが決まっていきます。
最近増えてきたクロスセクターというチーム
コンサルティングファームの組織には、セクター/インダストリーという、特定の業界を担当するチームがあるとお伝えしてきましたが、近年、特定の業界のくくりではとらえきれない課題など、業界を横断で取り扱う必要性が言及されるようになっています。 たとえば、日本における少子高齢化といった社会的な課題は様々な業界に影響しますし、脱炭素社会を目指した活動も特定の業界だけに関係した話ではないわけです。 したがって、業界を横断した課題を扱うチームとして、クロスセクターチームというものを作るコンサルティングファームも増えてきました。 学生さんなんかには、このクロスセクターチーム、非常に人気があるみたいですね。
セクター/インダストリーとコンピテンシー/ソリューションの関わり方
案件組成はセクター/インダストリー
それではここから、セクター/インダストリーチームとコンピテンシー/ソリューションチームはどう関わるのかを解説していきます。 まず、案件組成はセクター/インダストリーチームが基本的に行います。営業のような役割を行い、何もお客様から課題を頂いていないところから、話を広げ、まず小さな案件でもいいので戦略策定、あるいはリサーチの仕事を受注します。 そして、これを段々と大きな仕事にしていく、ということをセクター/インダストリーチームが主導します。案件の組成段階や、組成直後の状況ではまだセクター/インダストリーチームのみで仕事を進めている状況です。 セクター/インダストリーチームは顧客ごとに2,3年の計画を作っており、まずはこの案件、その次にこういった仕事を受注する、というプランを持っています。こうしたプランにあるように戦略策定やリサーチの結果としてレポートを作成し、お客様がうまくコンサルティングファーム側のプランに乗る形で発注をしてくれるように考えることも役割となります。
案件のフェーズごとにコンピテンシー/ソリューションが介入
セクター/インダストリーチームの主な仕事は戦略策定、リサーチで、お客様に対してはレポートを作成し、それを提出することが主な仕事内容になるのですが、具体的な業務改善・トランスフォーメーション、またはシステム・IT・デジタル技術の導入といったことが求められるようになると、その段階からはコンピテンシー/ソリューションチームと協力して仕事を進めていくことになります。 特定のテーマやトピックがお客様から実際に実行していくべき取り組みとして選択された際には、その領域のプロであるコンピテンシー/ソリューションチームが参加する、というわけです。 以降は、仕事のリードはコンピテンシー/ソリューションチームがメインで担当することになり、セクター/インダストリーチームのメンバーはプロジェクトの重要な局面や週次または月次で行われる定例会に同席する、といった関わり方になることが一般的です。 しかし、業務改善・トランスフォーメーション、システム・IT・デジタル技術の導入においても知見があるセクター/インダストリーチームのメンバーなどはそのままプロジェクトへの関与を続けることもありますので、状況と、人手次第となるでしょう。
終わりに
いかがでしたでしょうか。コンサルティングファームの組織体制とそれに関連した仕事内容、なんとなくイメージがわきましたでしょうか。
もしご興味おありでしたら、皆さんのキャリア形成のためにもコンサルティングファームは非常に良い選択肢になると思っていますので、学生さん、社会人の方のいずれにもコンサルティングファームの検討をおススメします。
本ブログでは、この他にもコンサルティングファームの仕事内容や実態、体験談について解説していますので、ぜひご覧になってください。
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