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Salesforce のフローとは
Salesforceの自動化ソリューションの一つであるフローって、便利ですよね。私の会社ではSoarizeというAppExchangeのパッケージを使用していたのですが、「移り変わる画面の数が多い」、「どれが必須項目なのかわからない」という声が上がり、フローを作成しました。
フローを用いると新たに画面を作成することが出来るのですが、ユーザーの視点としてはこの画面上の項目を埋め、「次へ」というボタンをクリックすると画面が切り替わっていき、「完了」まで進めていくと処理が完了する、という使用感となるため、ユーザーには大変喜ばれる結果となりました。
今回は、フローでできる業務プロセスの簡略化がもたらすメリットについてご紹介しようと思います。フローを具体的に使用する方法、設定の方法は、TRAILHEADの内容が基本になりますので、こちらご参照頂ければと思います。
フローで出来る簡略化とは
フローの画面に表示させる項目は設定でいじることが出来るため、必須の項目のみが画面上にあるようにすることも出来ますし、ユーザーの入力内容に応じて次の画面で表示させる項目を変更することが出来ます。これをうまく使うと、ユーザーが項目を入力する回数を最小化しつつ、最短で処理を終えることが出来るようになります。
具体的に、どの程度処理が短くなるのか、使用感が変わるのかを動画で見て頂きましょう。以下にて、Soarizeというパッケージで購買の承認申請を行うまでの流れを動画にしました。
動画で比較:通常の場合とフローを用いた場合
まずは通常の流れ、フローを用いない場合はこちら。
この操作では、以下の図のように購買、発注、発注明細とオブジェクトを3つ作り、発注オブジェクトに対してファイル添付を行い、そして発注オブジェクトに対して承認申請を実行しています。
これと同じことをフローで実行した場合がこちらとなります。
フローのメリット:ユーザーは何も覚えなくてよくなる
フローを用いることのメリットの真髄は、ユーザー側に何も覚えてもらう必要がなくなる、という点だと考えています。なぜそうしたメリットが得られるのか、先ほど挙げた2つの動画を比べた差異から考えてみましょう。
- 通常の場合
- 必須入力の項目、任意入力の項目が画面上にともに存在する
⇒どれを入力したらいいのか、ユーザーが覚えておかないといけない - 画面が切り替わり、異なるレイアウトの画面が表示される回数が多い
⇒次にどのボタンを押すのか、ユーザーが覚えておかないといけない
- 必須入力の項目、任意入力の項目が画面上にともに存在する
- フローを用いた場合
- 入力が必須な項目だけが表示される
⇒ユーザーはどの項目に入力が必要で、どの項目は不要なのか、と覚えておく必要がない - 画面のレイアウトが変わらない
⇒ユーザーはすべての項目を入れて、「次へ」をクリックすると処理が完了する
- 入力が必須な項目だけが表示される
これらの主な差異をまとめてみると、フローを用いることの優位点は、必要最低限の項目だけを画面に表示させることが可能な点、そしてレイアウトを固定させることが出来る点です。
必要最低限の項目に絞った表示になる
画面上にいろいろな項目があると、どれをいじったらいいのかわからず、ユーザーは覚える努力が必要になってしまいますが、「すべて入れればいい」と考えてもらえるとユーザー側にこうした努力は不要となります。
また、Salesforceのフローでは画面を作成できるとお伝えしましたが、その画面の中で備考のようにコメントを記述できるため、どんな用途で各項目を入力してほしいのか、という説明を加えることもできます。したがって、「この項目にはこんなことを入れてほしい」という内容を画面上に記述してしまえば、別途マニュアルを作成するというシステム管理者側の工数も削減できます。
統一したレイアウトで迷うことがない
画面が何度も切り替わると、次はどの画面に行けばいいのか、どのボタンを押せばいいのか、とユーザーに覚えてもらう、あるいはマニュアルで詳細に記述する必要があります。
しかし、フローを使用すると画面のレイアウトは項目の並んだ中央部分と右下に配置された 「前へ」 ・「次へ」のボタンのみというシンプルなレイアウトに固定されるため、次に何をしたらいいのか、とユーザーが迷うこともありません。
画面に出てきた項目をすべて埋めて「次へ」をクリックするだけ
つまり、フローを用いると、ユーザーとしては画面上に出てきた項目すべてに対して、画面上に記述されている説明に従って値を入力し、画面右下にある「次へ」ボタンをクリックしていけば処理が終わるため、マニュアルを片手にどんな値を入れたらいいのか、と考える必要はなくなり、「とりあえずやるだけ」になります。
もちろん、フローを作成するシステム管理者がきちんと業務シナリオを理解したうえで、分岐の漏れなどがないように設計をする必要がありますが、出来上がったシステムを使用するユーザー側のメリットは相当に大きいものとなるでしょう。
終わりに: システム設計ではユーザー目線に立ちましょう 【反省】
最後に、コンサル時代と事業会社所属のいまを比較して、システム設計における反省をまとめたいと思います。 一言で言うならば、実際にシステムを操作することになるユーザーの視点に立ちましょう、というものになります。
過去にコンサルとしてシステム導入を行っていた時は、「こうすればやりたいことが実現できる」といった視点でシステム設計をすることが多く、またそうした設計に関する議論の相手は顧客側の業務のスペシャリスト、あるいはシステム担当者でした。
今回も同じ考えでシステム設計を行い、マニュアルを社員に展開したところ、「こんなの難しくて出来ません」というレスポンスが非常に多く、内心「え、そんなに難しいかな・・・?」という思いを抱えながらフローを用いたプロセスの簡略化を進めていました。
しかし、今ならこうしたレスポンスをして下さった方々の気持ちがわかります。
中小企業やスタートアップのような位置づけの会社では、定型、否定形含む様々な業務を一人で複数持つことになります。そうした状況で、自分が抱える数ある業務のうちのほんの数%でしかないシステム処理に複数回の画面遷移、必須項目と任意入力項目が入り乱れた画面があることで、
「この項目入れたらいいのかわからない」、「次にどのボタンを押せばいいのかわからない」といった状況に陥り、その場ではマニュアルを見ることで何とか解決できるものの、また次回同じ操作をするのは数日後なのでその時には手順を忘れており再現できないため、再度 「この項目入れたらいいのかわからない」、「次にどのボタンを押せばいいのかわからない」 、というイライラを募らせながらマニュアルを開く、というループに陥っていたのだと思います。
大企業などの同じ業務をある程度繰り返すことが役割として期待されるグループなどを持つ場合は「習熟すればよし」、の一言で済むのかもしれませんが、今回はそうではありませんでした。
ユーザーの目線に立つと一言でいえば簡単ですが、そこにもう一つ、時間軸を加えてみるのが良いのかな、と思いました。たとえば、ユーザーの1週間を想像してみて、一週間の大半で使用するシステムなのか、それともわずか10分程度しか使用しない想定なのか、これによってどういったUIにするべきかが変わると思います。
コンサルでは、大企業しか相手にしませんし、保守に絡む機会も稀なので、非常に良い経験が出来ました。今後も、気を付けていこうと思います。
それはそうと、Salesforceのフローは非常に便利なので、皆さんぜひ活用されてください。