現在、総合コンサルティングファームで勤めている私ですが、次は戦略ファームにチャレンジしたいと思っています。
こちらの投稿では、コンサルティング業界では転職時に対策が必要になるフェルミ推定を実際に行っていく過程を例題を取り扱いながら、お伝えしていきたいと思っています。今回のお題は「iPhoneケースの市場規模は?売上向上施策は?」です。
Agenda
想定する読者
- コンサルティングファームへの就職を考えている就活生
- コンサルティングファームへの転職を考えているコンサル未経験の社会人の方
メリット
- 面接に向けての練習問題として活用できる
- 面接の場で問題に対してどのようにアプローチしていくべきかがわかる
- 面接の場でどのように話をするべきなのかが参考にできる
- 面接の場で問題を解いていくのと同時にどのような説明をするべきかがわかる
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前提の確認
まず、前提を確認します。ここで確認するべきは、どの国の市場規模か?そして年間の売上金額という理解でよいか?という点かと思います。
ここについては、日本における年間のiPhone ケースの売上金額が推定する対象であるとわかったとしましょう。
市場規模推定のApproach
それでは、市場規模を推定するためのアプローチを考えていきます。
こちらの投稿で整理したアプローチ方法でいえば、耐久品のケースが適用できるので、アプローチの基本式は、以下のようになると考えます。
iPhoneケースの市場規模
=人口×iPhoneケースの所有率×iPhoneケース保有個数
×iPhoneケース買い替え頻度×iPhoneケース単価
このiPhone ケースの所有率、保有個数ですが、ケースに目を向けると少々イメージがつきにくいので、代わりにiPhoneそのものの所有率、保有個数を用いて、それに対してケースを使う人が何割いるのか、という考え方に変えたいと思います。
iPhoneケースは当然ながらiPhoneの保有者が購入するものなので、日本国民が保有するiPhoneの台数を母数として、そのうち何割がiPhoneケースを使用していて、そして何年に一度買い換えられるのかという点を考慮することで年間の売上金額を求めることが出来ると考えます。
そうすると、以下のような式に変更されます。iPhoneケースは、iPhoneを持っている人であればほぼ必ず購入しているものと思われるので、iPhoneケース保有率については常に100%とします。
iPhoneケースの市場規模
=人口×iPhone所有率×iPhone保有個数×iPhoneケース保有率
×iPhoneケース買い替え頻度×iPhoneケース単価
セグメント分け、数値代入
iPhoneの所有率、保有個数は、年代によって異なると考えられるため、セグメントは年代であるとし、以下のようにマトリクスで整理をし、数値についても代入していきます。
iPhone所有率
iPhone所有率については、iPhoneはスマートフォンの一つであるという定義をして、スマートフォンを保有している割合と、それがiPhoneであるという割合をかけることで算出しました。
iPhoneは、スマートフォンユーザーの40%を占めているという話を聞いたことがあるので、ここではスマートフォンの所有率を感覚から推定し、それに対して一律で40%という数値をかけています。
iPhone保有台数
21-40歳、 41-60歳の2つの年代層については、社会人の方などで会社から貸与されているスマートフォンを持っている方が一定数いるとして、全体の10人に一人が2台を持っていると考え、保有台数は1.1としています。
iPhoneケース保有率
日本では、スマートフォンの場合はケースを使わない方もいますが、iPhoneに至ってはケース無しで使う人はほぼほぼ見かけることは無いので、ケースの保有率は100%としています。
買い替え頻度と単価
買い替え頻度と単価については、若いうちは安いものを使って高頻度で買い替えし、年齢が上がるにつれて高価なものを長い年月使用するという想定を置きました。
単価については、革製のものなんかは高価なものもありますが、そういったケースを使用する方は少数派と考え、基本的には3000円以下と想定しています。
しかし、61歳以上の年代層はスマートフォンを高頻度で活用する方も少ないと思い、ケースについては安いもので十分と考え、頻度も1年に1回といった高頻度ではないものとしました。
計算結果
結果を計算していきます。
- 6-12歳:27億円
- 12-20歳:36億円
- 21-40歳:132億円
- 41-60歳:99億円
- 61-80歳:6億円
合計で、300億円という結果となりました。
リアリティの検証
この数字ですが、実際の数値を調べる前に、あっていそうかどうかを考えてみたいと思います。方法としては、iPhoneケースのメーカーが一社でどの程度の売り上げを上げているのか、という点を考えてみることで検証します。
感覚値ではありますが、iPhoneのケースメーカーは日本国内に相当数いると考えられます。10社と言えば少ない気がしますし、100社、50社はさすがに多すぎる気がするため、ここでは国内に30社程度、存在しているという仮定を置きます。
この30社は市場規模を均等に分けているとすると、一社当たりの売上は年間で10億円となります。これらの企業ですが、iPhoneケースの製造、販売以外のビジネスを持っていないとは想定しにくいため、この売り上げは企業の一つの事業のうち、一つの製品カテゴリーで出されているものだと考えられます。
この考えでいくと、とある企業の事業のうち、一つの製品カテゴリーで年間10億円が上げられている、そしてそういった企業が30社程度いる、というのは、感覚的にそこまで違和感はないかと思います。
実際の数値の確認
実際にはどうなのかを調べてみました。こちらの内容によれば、iPhoneのケース、バッテリーなどの周辺機器の年間の推定市場規模は423億円でした。(2015年時点なので少々古いのですが)
売り上げはケースが大半を占めるのではないかと思われるので、300億円という数値はそこそこの精度だったのではないかと考えられます。
売上向上施策の検討
検討要素⇒施策
それでは続いて、こうして求めた市場規模に関連して、自分がiPhoneのケースメーカーの一つであるとし、売上向上施策を考えるということになったらどうするか、考えていきたいと思います。
まずは、施策を考えるためのFactorを整理します。検討すべき要素としては、以下のような点が上げられます。
- 自社製品の観点
- 自社製品の価格帯は低価格帯か、中価格帯か、高価格帯か
- 自社製品の売り出しポイントは何か(競合と比較しての強み)
- 価格を下げて販売数量を伸ばすことはできるか
- 価格を上げても顧客は購入してくれるか
- 顧客の観点
- 自社製品を購入してくれる顧客は何を求めているのか
- 自社製品を購入してくれる顧客はどんなセグメントの人々なのか
(若年層か、社会人がメインか、男性・女性どちらが多いのか、地域別に売り上げに差異があるか)
- チャネルの観点
- 店頭販売、ECサイト経由、どういった販売チャネルが主流か
- 広告、マーケティングの観点
- どのような広告宣伝、マーケティングを行っているか
- WEB経由での顧客への宣伝などは行っているか
施策立案の観点としては、売り上げを上げるとなれば、単価を上げるか、販売数量を伸ばすことが必要になりますが、この2つの観点について、フェルミ推定で検討した要素や売上向上施策の検討要素を加味し、以下のように施策を考えました。
- 単価を上げる
- 高機能化、デザイン性の向上で価格を高める
- キャラクター、イベントとのコラボで価格を高める
(限定品を生産する)
- 革製品などの高価格帯のラインナップをそろえる
- 販売数量を伸ばす
- iPhoneの保有率を高める
※ケースメーカーとしては対応できることは限定的なので却下
- iPhoneの保有台数を増やす
※ケースメーカーとしては対応できることは限定的なので却下
- iPhone保有者のケース保有率を高める
※既に100%、かつケースメーカーとしては対応できることは限定的なので却下
- 自社製品が選ばれる割合を高める
- 機能、デザイン性を高める
- 得られていない顧客セグメントが求める製品ラインナップを拡充する
- 新iPhoneが出たらすぐに対応したケースを提供する
- 広告宣伝、WEBマーケティングを有効活用、ターゲット広告なども活用
- キャラクター、イベントとのコラボ製品を作る
(限定品の生産で購買意欲を高める) - ECサイトでの掲載順を高める
- 店頭販売における棚の位置を最適化する
- iPhoneの保有率を高める
売上向上施策の優先順位
複数の施策が考えられましたが、優先順位をつけて対応を進める必要があります。ここでは、実現の容易性と、効果を見込んで、優先順位をつけたいと思います。今回、対応すべきと考えた施策は、以下のとおりです。
- 新iPhoneが出たらすぐに対応したケースを提供する
- ECサイトでの掲載順を高め、販売数量増大を狙う
- 店頭販売における棚位置の最適化を通じて販売数量増大を狙う
- 広告宣伝、WEBマーケティング、ターゲット広告を有効活用
- デザイン性の向上で価格を上げつつ、販売数量の増加を狙う
機能性を拡張したり、製品ラインナップを拡充したり、コラボをすることは早急に実現することが難しい一方で効果があるのか事前に検証することが難しいと考え、それ以外の施策について優先順位をつけています。
新iPhoneへの対応を早める
最も優先的に取り組むべき施策であると考えたのが、新型iPhoneへの対応ケースの提供を早めるというものです。
最近は減っているという話も聞きますが、新型iPhoneの販売直後から購入に走る消費者は依然として多く、そうした消費者が求めるケースの需要を取り込むためには、新型iPhoneの発売日と同日あるいはそれ以前を目指してケースを発売しておくことが必要となります。
事前に公開情報から新型iPhoneの規格を予測し、製品の製造を始める、あるいは関係会社から情報を取得できるのであればそれに従って製造を始めるといったことが予測されるアプローチとなります。
ECサイトでの掲載順の管理
自社の販売チャネルのメインがECサイトなのであれば、ECサイトでの掲載順を最適化することは重要です。
掲載順がどのように管理されているのか把握するところから始める必要がありますが、新しい口コミがある製品がより上に来るのであれば口コミを入れてもらえるような仕組みを考案したり、あるいは単純にECサイトにお金を払えばいいのであればそれも検討します。
コストと、想定される収益増加のバランスはもちろん考える必要があります。
店頭販売でのロケーション最適化
店頭で販売されるケースがメインの売り上げ確保手段なのであれば、お店のどの位置に置かれるのか、という点が非常に重要になります。
これもどのようにお店側がロケーションを考えているのか、その意思決定の背景を確認するというアクションも必要ですが、お店側によく製品が売れる棚においてもらえるような仕組みが必要です。
お金を払えばいいのか、あるいはキックバックなどの仕組みを入れることで優先的に売れるように配慮してもらう、といったことが可能なのであれば、コストメリットを検討したうえで対応を決定すると良いと思います。
広告宣伝、WEBマーケティング、Target広告の活用
TVCM等はもちろん行うものではないと思いますが、iPhoneケースはファッション雑誌、ガジェット系の雑誌でよく取り扱われています。したがって、これらの想定読者をターゲットとして、WEBを有効活用したTarget広告を行うことは有効かと思います。
機能やデザインの面で他社との差別化ポイントがある製品を取り扱っているのであれば、こうした広告を行うことで数多くあるケースの中から自社製品を選択してもらう、ということも可能となるかと思われます。
デザイン性の向上
デザイン性の向上はカラーリング、素材の変更などが主な活動になると考えられるため、少々実施する際の難易度が高いのですが、価格を上げつつ販売数量も増大させることが出来るかもしれないという点で取り組むべき施策と考えました。
もちろん、顧客にはどのようなデザインが好まれるのか、といった情報を十分に精査してからアクションをとる必要があります。
おわりに
フェルミ推定とケース面談の中間みたいな問題でしたね。
個人的な見解ですが、重要なのは、「施策は?」と聞かれてそのまま施策を考え始めないことだと思いました。施策をそのまま考え始めると、「単価を上げる方法としてXXX、販売数量を伸ばす兵法としてXXXX・・・」という一般的な検討は出来るとは思いますが、それだけだとやはり具体性がなく、案も多く出せないのではないでしょうか。
まずは施策立案の前に検討すべき要素を洗い出し、その要素については様々なパターンがあるということを頭に置きながら施策を考える、これが施策をできるだけ具体化し、そして多く考える際のポイントなのではないかと思いました。
ご参考になれば幸いです。