今回は、プロジェクトに影響を及ぼす存在としてProject Stakeholderとは何か?Environmental Factorとは何か?という点をまとめていきます。
Agenda
Project Stakeholderとは
PMBOKの定義では、Project Stakeholderは、ProjectのもたらすOutcomeによって影響を受ける人々、あるいはProjectのOutcomeに影響をもたらす人々です。
結果として、Project StakeholderはProjectの進行や方針に対して、影響を及ぼすようになります。
可能性レベルでもStakeholder扱いとなる
ProjectのOutcomeへの影響を持つ、あるいは影響を受けると”見受けられる”人もProject Stakeholderとしてカウントされます。
なぜなら、Projectは未完了の状況ですので影響が確実にあると判定することは難しいため、可能性レベルの段階でもProjectにおける重要な局面ではその選択がもしかしたら影響を及ぼす可能性のある人々に対してお伺いを立てなくてはいけないケースというものがあるからです。
Negative Stakeholder
ProjectのOutcomeによる影響というのは常にポジティブなものではありません。例えば、物流業務の改善をするプロジェクトがあり、そこでは計画に合わせオペレーションを可能な限り合わせることとし、計画の見直しには十分な柔軟性を持たせたいという方針が打ち出されたとします。
そうすると、計画段階では柔軟性を確保した結果、実際のオペレーション(在庫補充、日程調整、リソース調整等)側も頻繁に計画を見直さなくてはならなくなり、つまりどこか別のところにしわ寄せがされるというケースがあります。
こうした時、物流のオペレーション担当者はこのプロジェクトに対してNegative Stakeholderとなり、プロジェクトの目指す方向とは逆の方向に進めていくことにMotivationを持つ存在となります。
したがって、プロジェクトとしてはこの方が譲歩してくれるところを探すことが一つのKey Activityとなります。
重要なのは、Negative Stakeholderとされる人々は色々な部分でプロジェクトの方針などに反対することがあるかもしれませんが、そうした人々が生来からのNegativeな性質を持った人々ではないという点です。
彼らともうまく協調関係を築くことが、Projectをうまく進めていくためのカギとなります。
Project StakeholderはProject発足直後から積極的に巻き込むべし
Project Stakeholderは、Project完了時のOutcomeにより影響を受ける、あるいはOutcomeに影響をもたらす人々です。Project開始直後は未決定事項も大量にあるため、その点でProject StakeholderはProject開始当初が最も強く影響力をふるいます。
しかしながら、えてしてまだ具体的な議論がされていないため、Project StakeholderがProjectへの関与度合いや意見出しについて危機感を持ち始めるのはプロジェクトがある程度進んだ状態になってからとなります。
ただ、ある程度の時間が経過した状態では、すでに相当のCostをかけてしまっており、具体的な設計や成果物も出来上がった状態となっているため、このタイミングでProject Stakeholderがようやく口出しをするようになっても、すでに進めていた議論を蒸し返すような事態となり、変更管理、変更対応に相応の工数が必要となってしまいます。
そのため、Projectにおいては、Project発足直後から積極的にProject Stakeholderを巻き込み、方針について認識合わせを行い、合意形成し、あとでちゃぶ台返しをさせないようにコントロールしていくことが重要となります。
個人的にはこのチャート、スゴク納得感があります。何度、ちゃぶ台返しで痛い目を見てきたことか・・・
Stakeholder Managementの要素
Stakeholderを適切に管理していくことが、Stakeholder Managementとなります。ポイントは以下の通りとなります。
- Identify Stakeholders - まずはStakeholderが誰かを明らかにすること
- Identify Influence factor - Stakeholderがどのような影響を及ぼすのかについて特定すること
- Understand their needs/expectations - Stakeholderの希望、期待値をきちんと理解すること
- Assess knowledge and skill - Stakeholderはプロジェクト進行に際し適切なInputをもたらしますので、知識、スキルレベルを確認すること
- Map stakeholder to phases - フェーズごとに誰が重要になるのか、という部分は変遷するので、だれがどのフェーズでKey Manになるのかを把握すること
Enterprise Environmental Factorsとは
Project Stakeholderは、プロジェクトの内部でどうにか対処できるものですが、中にはプロジェクト内のリソースでは正直どうしようもない要素(外部からプロジェクトに影響を及ぼすもの)というものもあります。
それが、Enterprise Environmental Factors、つまり環境要因です。
Project Managerは、常にEnterprise Environmental Factorsを意識して、それらがどのようにプロジェクトに影響を及ぼすだろうか、という点をあらかじめ考え、リスク管理とリスク対応をしていく必要があります。
こちらの絵は例ですが、新たに病院を打ち立てようとしたとき、外部要因的にプロジェクト内だけではコントロールが難しいものとして、政府の規制や、そもそもの人口、利用できる近くの緊急サービスの有無、利用できる近くの医薬品メーカーの有無、医師と外科医の存在などがあげられるでしょう。こうしたものは十分に吟味にされたうえでプロジェクトが始まるのでしょうが、突然の変化というのも起こりえなくはありません。
終わりに
Stakeholderの巻き込みが不十分なプロジェクトほど怖いものはありません。これまで1年かけて積み上げてきた想定や前提となる方針や成果物が根本からひっくり返されるようなことも起こりえますから。
実際にはその時点ですでにコストをかけすぎているのでやり直しがきかない、ということでそれまでの方針を貫いて矛盾を色々な所で抱えながらプロジェクトを進めていくというのが実態としてよくあるケースなのかもしれません。
そうならないように、プロジェクト開始直後からきちんとStakeholderを特定し、巻き込んでおくことが重要ですね。
参考にしてみた書籍
以下に、参考にしてみた書籍を載せています。こちらの書籍は、PMPとして25年以上活躍され、プロジェクトマネジメントに関して30,000人以上もの人材をIndustry問わず輩出してきているPM-Pulse創設者のManeesh Vijayaさんです。