今回はプロジェクトにおける組織体制の話をしていきます。プロジェクトを円滑に進めていくにあたり、組織体制は非常に重要です。
プロジェクトを実際に進めていくのは細分化されたチームにおけるチームメンバーであるため、メンバーが仕事を効率よく進めていくためには、プロジェクト内にチームメンバー間のコミュニケーションを効率化、円滑化し、チーム横断のトピックなども歩調を合わせて進めていけるようにする仕組みが必要となります。
こうした仕組みの前提となるのが、組織体制、Organization Structureです。
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組織のタイプは3つ
組織の存在意義は、当然ながら仕事をこなすことにあります。仕事というものは、以前の投稿でも触れましたがOperationとProjectの2つに分けることが出来ます。
したがって、組織はOperationのみを執り行うもの、Projectのみを執り行うもの、そしてOperationとProjectの双方を執り行うものの3つにわけることが出来ます。
Functional / Departmental Organization (機能的 / 部門別組織)
Operationのみを執り行う組織をFunctional Organization(機能的組織)、あるいはDepartmental Organization(部門別組織)といいます。
たとえば、特定の製品を取り扱う小売店において、商品を売る、買うという役割を持った組織があるとしましょう。販売ルートも、仕入れルートも確定していて、日々の業務はOperationである、とします。
この場合、この組織の人々(Resource)は、組織内での特定の機能(Function)に対して割り当てられることとなります。すべての所属メンバーが発注書の作成、注文、納品確認、見積書の作成、受注、販売、出荷確認、請求書の作成、請求、などを等しく行うようにするのは非効率的ですから、こうした機能ごとに人々を分けて、分業することで全体の効率を高めます。
分業することで全体の効率性が上がることは、「分業による規模の経済(Economies of Scale through Division of Labor)」という言葉もある通りですね。
Projectised Organization (プロジェクト組織)
機能的組織がある一方で、中にはクライアントから受注した特定の業務を遂行することを責任として持つ組織というものもあります。
こうした組織は何というのかというと、そのまんまなんですが、プロジェクト組織(Projectised Organization)といいます。
例えばコンサルティングファームなんかは、コンサルタントの仕事はクライアントと締結した契約に従ってプロジェクトを運営していくことですから、Operation作業というものはなく、すべての作業がProjectとなります。
組織に所属するメンバーは、特定の機能を持っているという状況ではなく、チームとして動き、そのチームの中で必要であれば必要なことすべてを全うすることが求められます。
(※本当は、コンサルタントといえど会社員であるので少なからずOperation的な業務もありますが、あくまで例としてとらえてください)
Matrix Organization (マトリクス組織)
なんだかんだで、これが一番多いんじゃないでしょうか。ProjectとOperationの双方を実施する組織です。
機能的組織・部門別組織(Functional/Departmental Organization)に所属している状態でありながらも、同時に特定のプロジェクトの一員でもあるという状況です。
この状況では、チームメンバーは所属する部門のほうと、プロジェクトのほうで上司がそれぞれ存在することになります。
プロジェクトへの関与割合でさらに3つに
こちらのマトリクス組織(Matrix Organization)ですが、プロジェクトマネージャーの観点からはさらに3つにわけることがあります。
3つに分ける際の観点は、各チームメンバーのプロジェクトへの関与割合、別の言い方をすれば、プロジェクトマネージャーからの関与できる割合です。
プロジェクトに対して、チームメンバーの関与度合いが強く、Project Managerもチームメンバーに対して権限を強く持っている場合の状況を、Strong Matrixといいます。(Project側が強い、の意味)
事前に機能的組織側のマネージャーとプロジェクトマネージャーの間で、人員のプロジェクトへの関与度合いについては合意形成をしていることが必要となりますが、仮にProjectに80%、日々のOperationに20%という割合で合意していたのであれば、チームメンバーはプロジェクトマネージャー側から受ける依頼を優先的に対応、ということとなります。
反対に、Operationを80%、Projectは20%、となっている場合はWeak Matrixといいます。(Project側が弱い、の意味)この状況では、プロジェクトマネージャーはチームメンバーに対して強い影響を持つことはありません。日々のOperationで忙しいので、あんまりプロジェクトにどっぷりつかってもらうことが出来ないというケースですね。
最後に、中間に位置するProjectとOperationが同程度というケースはBalanced Matrixといいます。
マトリクス組織の例
私が昔、IT機器の営業をやっていたころのことを例に出します。このころ、私はMatrix Organizationに所属していました。私は当時、とある製品のセールス事業部にいましたが、これはすなわち、Functional Organizationとなります。販売をするという機能を持っているわけです。
しかしながら、業界向けにナレッジをためていくことも必要だろうということで、当時の私は自動車業界担当チームに所属し、そこでは私の所属する事業部以外からも人が集められていました。これが、Projectised Organizationとなります。
自動車業界担当チームは、別にほかの業界に営業してもいいのですが、自動車業界の顧客はいろいろと注文も多く、その代わり売り上げも大きかったので、Project側の割合のほうが大きいStrong Matrixであったといえますね。
終わりに
久しぶりに営業やってた頃のことを思い出しました。会社は、成長に合わせて組織体制を変えていくものだと思うのですが、最初はみんな何でもやらないといけないProjectised、そこから規模が大きくなったことで分業が始まりFunctionalに近づき、停滞しないように新たなProjectを創出し続けていくことでMatrix型になっていく、みたいな感じですかね。
Project Managementの観点では、関係する組織体制はおそらくMatrix型が一番多いケースとなると思います。重要なのは、きちんと関与度合いを決めて、必要な領域ではきちんと必要な人の関与割合を確保することとなるでしょう。
組織の話は、最近人事系のコンサルティングが盛り上がっていることからわかる通り、超ホットなトピックかつ、組織や企業ごとに論点が異なる非常に難しい問題だと思います。
とりあえずここでは、PMBOKにおける組織体制の定義のご紹介となります点をご理解いただけますと幸いです。