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【ざっくり解説】SAP IBPの基本、Key FigureとPlanning Operatorについて

皆さん、こんにちわ。今回は、SAP IBPの基本知識として理解が必要となる、Key FigureとPlanning Operatorというものについてご紹介します。

まだまだ日本では導入事例が少なく、SAP IBPの知見を持つ方も少ない状況ですが、SAP社としても日本企業への導入には注力している様子ですので、もしSAP IBPの導入を検討されている、あるいは機能の概要だけでも調査したい、という方がいらっしゃいましたら本投稿が参考になれば幸いです。

想定読者

  • SAP社の提供するSAP IBPの導入を検討されている事業会社のご担当者
  • SAP IBPの導入PJに関与することになった事業会社のご担当者
  • SAP IBPの導入担当となったSIer, コンサルティングファームの方
  • 他ソリューションとの比較検討のためSAP IBPの機能を調査したい方

Key Figure

SAP IBPにおける計画情報がKey Figure

SAP IBPで策定する計画数値、そしてその計画数値の参照などで使用するものが、Key Figureとなります。

Key Figureには実際にどんなものがあるのか、いくつかサンプルを取り上げてみます。

  • Stock on Hand - 在庫数量
  • Actual Qty - 販売実績数量
  • Statistical Fcst Qty - 統計的需要予測により作成した予測販売数量
  • Customer Supply - 顧客への販売計画数量
  • Sales Revenue - 売上計画
  • Production Receipts - 製造数量(製造により受領する数量)
  • Transportation Supply - 在庫転送数量(在庫転送により出荷する数量)
  • Transportation Receipts - 在庫転送数量(在庫転送により受領する数量)

S/4のトランザクションデータから抜き出した項目がInputとなる

いくつかKey Figureの例を見て頂くとイメージがしやすいと思うのですが、これらのKey Figureと呼ばれるものはトランザクションデータの中の項目になっています。

在庫数量、販売数量、製造数量、在庫転送の数量、そして売上などを例として取り上げましたが、過去の情報についてはS/4などのERP内のトランザクションデータをInputとしてSAP IBPが取り込み、それらの過去の情報を用いて未来に向けた計画を作ることになります。

データの持ち方による分け方(StoredとCalculated)

Key Figureはデータの持ち方でStoredとCalculated、そしてStoredかつCalculatedという3種類に分けることが出来ます。

数値を格納するStored

StoredのKey Figureは、文字通りデータを格納したKey Figureであり、S/4などのERPからデータを取ってきてそのまま格納しておく、あるいはユーザーがSAP IBPに対して直接入力するといった方法でデータを格納しておく、という使い方をします。

在庫数量、販売実績数量はS/4などのERPから取得したデータをそのまま格納し、営業チームが持つ売上目標などはマニュアルでSAP IBPに対して入力することで格納します。

StoredのKey Figureは編集できるという点が特徴になります。

計算結果を出力するCalculated

CalculatedのKey Figureは、別のKey Figureを参照して何かしらの計算を行うことでデータを表示します。ポイントは、CalculatedのKey Figureは編集できないという点です。

例えば、CalculatedのKey Figureとして売上総合利益があったとしましょう。計算式は、売上総合利益=売上-売上原価なので、この式はさらに以下のように分解できます。

  • 売上総合利益=(販売数量×販売単価)―(販売数量×原価)
  • Key Figureの種類
    • 売上総合利益:Calculated
    • 販売数量:Stored

計算式に含まれる販売数量、販売単価、原価などはStoredのKey Figureになりますので、売上総合利益を変化させたい場合は売上総合利益そのものを編集するのではなく、この例では販売数量という計算式の中の要素を編集するべきだということになります。

そのため、ここではCalculatedのKey Figureである売上総合利益は編集が出来ないようになっているのです。

なお、販売単価と原価はともにStoredのKey Figureとご説明させて頂いておりますが、これらの金額情報が一年を通してまったく変わらないという場合はマスターデータ上の項目として管理することも可能です。

ちなみに、売上総合利益を変動させたらその時にどのくらい売るべきなのか、つまり販売数量を知りたい、という要件があったとしたら、SAP IBPが提供する標準のKey Figureとは別にKey Figureを定義することで対処できます。

標準のKey Figureとは別に作成するKey Figureに「_New」をつけますと、計算式とKey Figureの種類は以下のようになります。

  • 売上総合利益_New=(販売数量_New×販売単価)―(販売数量_New×原価)
    =販売数量_New×(販売単価―原価)
  • Key Figureの種類
    • 売上総合利益:Stored
    • 販売数量:Calculated
    • 販売単価:Stored
    • 原価:Stored

このように新規にKey Figureを2つ作ることで、標準のKey Figureのときの販売数量を決めることで売上総合利益がわかる、という仕組みではなく、売上総合利益を決めるとそのときの販売数量がわかる、という仕組みを作ることが出来ます。

StoredかつCalculatedのKey Figure

ちょっと複雑になりますが、StoredかつCalculatedのKey Figureというものも実は作成することが出来ます。

Storedはデータを入れておくだけなので編集可能、Calculatedは他のKey Figureを計算に使用するので自分自身は編集不可能、という整理がこれまでの説明でしたが、StoredかつCalculatedというものはどういう使い方をするのでしょうか。具体例を用いて解説します。

Demand Planning QtyというKey FigureがSAP IBPの標準として存在します。

こちらのKey FigureはStoredかつCalculatedのタイプで、基本的にはLocal Demand Planという別のKey Figureをコピーした値を表示するのですが、その値はマニュアルで更新をかけることが可能で、マニュアルで更新をされた後は更新後の値を格納するということが出来ます。

データの更新の流れとしては、以下のようになります。

  • Local Demand Plan : 100
    • 担当者が需要計画を作成する
  • Demand Planning Qty : 100
    • 担当者が作成した需要計画が自動でコピーされる
  • Demand Planning Qty : 100⇒120
    • マネージャーがレビューし、需要計画を更新する
  • Demand Planning Qty : 120
    • 更新が加わった数値が格納された状態で以降のステップに進む

最初にLocal Demand Planをコピーするというところでは計算式を使用していますのでCalculatedの属性を持ちますが、その後自分自身を更新することが可能で、更新された場合は更新後の数値を格納して保持することが出来るというStoredの性質も併せ持っています。

このほかにもいろいろな使い道があるStoredかつCalculatedのKey Figureですが、非常に便利ではある一方で、あとから見たときにKey Figure同士でどのようにデータの受け渡しをしているのかが複雑になりやすく、わかりにくくなってしまうというデメリットがありますので、使用される場合にはご注意ください。

Key Figureを更新する3つの方法

Key Figureを更新する方法は3つあります。それぞれ、ご紹介していきます。

外部システムから連携を受ける

一つ目は、すでに何度か説明の中で登場していますが、S/4などのERP、あるいはその他のシステムと連携をするというものです。

在庫数量、販売実績数量、製造実績数量、在庫転送実績数量、などの実績情報はERPなどの基幹業務で持っていることが一般的ですので、そうしたシステムから取得するようSAP IBPとの間で連携機能を構築することになります。

なお、SAP IBPはSAP製品とは標準機能として連携することが可能ですが、その他の外部システムとの連携もサポートする機能を持っています。

Excel PV上で更新をかける

2つ目は、Excel PV上で表示したKey Figureに更新をかけるというものです。

例えば、特定の期間において突発的に大きな需要が発生したものの、今後はこのような需要の急増は起きないと思われるとき、このまま統計的需要予測をすると、今後も継続的な需要の増加を誤って見込んでしまう可能性があるので、販売実績数量を少々下方修正しておく必要があります。

そのような時、Excel PV上で販売実績数量を修正しておくということが出来ます。

なお、連携したデータを編集しても、また次の連携の時にせっかく編集したデータが元のデータで上書きされて戻ってしまうのではないか、と気にされる方がいらっしゃるかと思いますが、そのようなケースにはKey Figureを分けることで対処が出来ます。

これも具体例を用いて解説しましょう。

  • Actual Qty:Stored
    • ERP等から連携を受けた販売実績数量を格納するKey Figure
  • Actual Qty Adj.:StoredかつCalculated
    • Actual Qtyに更新を加えたい場合に修正を行うKey Figure
    • 初期値はActual Qtyであり、更新が加わった場合は更新後の値を格納する
  • Statistical Fcst Qty:Stored
    • 過去の販売実績から将来の需要予測を行った結果を格納するKey Figure
    • 需要予測はActual Qty Adj.を用いて実施される

Actual Qtyは販売実績数量を格納しておくStoredのKey Figureです。これが今回、修正を加えたいKey Figureなのですが、このKey FigureはERPからのデータ連携で毎回更新されるので、このKey Figureを更新してもまた次のデータ連携の時に更新されてしまいます。

したがって、StoredかつCalculatedのKey FigureであるActual Qty Adj.を使用します。Actual Qty Adj.はActual Qtyをコピーした情報が入力されていますが、もしユーザーがマニュアルで更新をかけた場合は更新後の値を保持し続けます。

そのため、次のデータ連携の時にもActual Qty Adj.は上書きされることがありません。なぜなら、SAP IBPがマニュアルでの更新が加わった状態であることを記憶しているからです。

そして、販売実績数量を修正しようとしていたそもそもの狙いは需要予測がきちんと動くようにすることでしたが、ここで統計的需要予測を実施する際、参照されるKey FigureはActual Qty ではなくActual Qty Adj.となります。

したがって、販売実績数量を修正したいときは、Actual Qty ではなくActual Qty Adj.を修正しておけば、一度の修正で以降のデータ連携、需要予測の実行時もともに対応が出来るわけです。

ここまで、販売実績数量の修正を例として取り上げましたが、その他にも在庫転送の数量を変更する、安全在庫数量を一時的に変更する、生産の活動を少し前倒しにする、より新しいモデルなどの後継品を多く販売し、終売品の販売数量を減らす、といったようにKey Figureを修正することがありますが、いずれもExcel PV上で実施することとなります。

Planning Operatorを実行する

3つ目の方法は、Planning Operatorというものを実行する方法です。Planning OperatorとはSAP IBPを用いた計画業務を自動化するツールであり、Key Figureの更新を行うものです。

詳細については次のセクションで解説します。

Planning Operator

SAP IBPによる自動計画策定ツールがPlanning Operator

Planning Operatorというのは、SAP IBPを用いた計画業務を自動化するツールであり、これを実行することでKey Figureが自動で更新されます。

主にどのようなものがあるのかをリストアップします。

  • Statistical Forecasting:統計的需要予測
  • Forecast Error Calculation:需要予測の精度評価

Statistical Forecasting:統計的需要予測は販売実績数量をもとに将来の需要を予測し、予測結果をKey Figureに格納します。

Forecast Error Calculation:需要予測の精度評価では、需要予測の結果と、実際の需要を比較し、精度がどの程度だったかをKey Figureに格納します。

Inventory Planning:安全在庫計算、在庫最適化では、在庫保持にかかるコスト、輸送コスト、欠品に付随するコストなどを考慮し、自社の各拠点にとって最適な安全在庫数量を計算し、Key Figureに格納します。

S&OP Operator:供給計画作成では、需要計画、現時点の在庫数量、生産や輸送のリードタイムなどを考慮し、生産計画、在庫転送計画、顧客への納品の計画を作成し、Key Figureに格納します。

Copy Operator:Key Figureのコピーでは、文字通りとあるKey Figureのデータを別のKey Figureにコピーします。例えば、販売拠点の1つが作成した需要計画を地域レベルの需要計画にコピーし、その後地域レベルでのレビューというステップに進む、というときに使用します。

Planning OperatorがなくてもExcel PV上ですべて計画作業が出来るというものではありませんので、Planning OperatorはSAP IBPを導入するうえでは必須の機能ととらえて頂ければと思います。

Key Figureの確認・更新とPlanning Operatorの実行を繰り返して計画を作成する

ここまでで、Key FigureとPlanning Operatorについて解説をしてきましたが、SAP IBPを用いた計画作業というのは、Key Figure の確認・修正とPlanning Operatorの実行を繰り返すことで行われます。

需要計画であれば、まずはPlanning Operatorである統計的需要予測が情報源とする販売実績などのKey Figureを確認し、必要があれば修正を行う。

その後、Planning Operatorである統計的需要予測を実行し、結果がKey Figureに格納されるので、それを見てまた修正の必要があれば修正する。

その他の供給計画なども同様にKey Figure の確認・修正とPlanning Operatorの実行を繰り返すことで計画作業は行われます。

このように、必要に応じてKey Figureの修正を行うには、Planning OperatorごとにInputにするKey Figureはどれなのか、またOutputになるKey Figureはどれなのか、という点も理解しておくことが必要となります。

今回はざっくり解説になりますのでPlanning OperatorのInput、Outputについては割愛させて頂きます。

終わりに

本投稿では、SAP IBPの基本として、Key FigureとPlanning Operatorについて簡単に解説させて頂きました。

まだまだSAP IBPの基本として理解しなくてはいけないものがありますので、また別の投稿でExcel PVの使用方法の詳細を解説したいと思いますので、ぜひご覧いただければと思います。

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