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コンサルティングファームの仕事内容を3つに分けてざっくり解説

最近、コンサルティングファームは新卒も中途のどちらも積極採用をしていますね。

他の職種に比べた場合の年収の高さや、若いうちから関われる業務範囲の広さや裁量の大きさなどからコンサルティングファームの人気も高まっている様子ですが、「そもそもコンサルティングファームって何?どんな仕事をしているの?」という疑問を持っている方は多いはずです。

公式ホームページの内容を見てみても、難しいカタカナが並べられており、理解するのに時間がかかるか、なんだか難しそうなのでもういいや、と思ってしまう方も多いのではないでしょうか。

先日、私も大学時代の友人が転職を考えているということで現職であるコンサルティングファームでの仕事について聞かれたのですが、やはり世間的にはあまり正しい理解を得られていないように思えました。

そこで、今回はコンサルティングファームの仕事内容について、主な3種類のカテゴリーに分けて解説していきたいと思います。

もし、皆さんがコンサルティングファームの仕事に興味を持たれている就活を控えた学生さんだったり、コンサルティングファームへの転職に興味を持っている社会人の方でしたら、こちらの投稿をご覧いただくことでコンサルティングファームの仕事内容についてより理解が進むような内容にしておりますので、ぜひお付き合いいただけますと幸いです。

想定読者

  • コンサルティングファームの仕事内容に興味を持っている学生さん
  • コンサルティングファームへの転職を考えておられる社会人の方
  • 一般常識として、コンサルティングファームがいったい何をしているのか知りたい方

期待できるメリット

  • コンサルティングファームが提供しているサービス、仕事内容はどんなものなのかがわかる
  • コンサルティングファームがどのようにして企業に価値を提供しているのか、わかる
  • 一般的にコンサルティングファームが行う具体的な仕事内容のイメージがわくようになる

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コンサルティングファームとは?

企業向けに課題を解決するサービスを提供している会社

初めに、コンサルティングファームってそもそも何?という質問に回答しておきましょう。

まずですが、コンサルティングファームは企業向けにサービスを提供している会社のことで、特に学術的な専門性や知見を活かして、様々な企業の課題解決を第三者的に支援しています。

例えば、新しい事業を作りたいと思っている文房具メーカーさんがいるとしましょう。この文房具メーカーさんは、このまま既存の事業を続けていても今以上の成長は見込めないので、何とか状況を打破しようと新規事業の創出をしたいと思っています。

そんな時に、自社内のメンバーだけで考えをめぐらしても、既存の事業をうまく回していくことを長年考えてきたメンバーたちだけでは新しいアイデアを生み出すことが難しかったり、そもそもなにから考え始めればいいのかわからない、という壁にぶつかることがあります。

そうしたときに、相談する相手がコンサルティングファームです。コンサルティングファームは、過去にも様々な企業の課題解決を支援してきた実績を持っており、そして市場にどういった企業が存在していて、そういった業種がどのような成長を遂げているのか、またどういった企業がどんな取り組みをしているのか、という情報を持っています。

したがって、文房具メーカーさんの立場としては、こうした専門性や知見、実績を持ったコンサルティングファームに相談することで、どんな事業を新規に生み出すべきなのか、という点を一緒に考えてもらう、ということが出来るのです。

そして、こうした専門性や知見の提供こそが、コンサルティングファームが企業に提供するサービスなのです。

ポイントは第三者視点、オーダーメイド、高い専門性

さて、コンサルティングファームは企業からの相談事項や課題に対して解決策を提示する、ということをお伝えしてきました。

しかし、コンサルティングファームに限らず、事業、あるいはサービスというものは基本的には他のどなたかの抱える問題や課題を解決することです。それでは、コンサルティングファームが他のサービス提供企業と異なる部分はどんなものでしょうか?

その答えは、第三者的視点で取り組むこと、オーダーメイドなサービスを提供すること、そして高い専門性や知識です。

第三者的視点

先ほどの例に戻りますと、文房具メーカーさんがコンサルティングファームに対して新規事業の創出をしたいので助けてほしい、と相談を持ち掛けました。それに対して、コンサルティングファームは解決策を提示します。

ここでのポイントは、コンサルティングファームは実際に文房具メーカーさんの代わりに新規事業の創出をしたり、その後の事業運営を直接行ったりはしない、という点です。したがって、コンサルティングファームはあくまでこの文房具メーカーさんの新規事業創出の支援をするという立場であり、アドバイスを行うという立場で関わるのです。

これは、裏を返せばコンサルティングファームはお客様のビジネスに対してリスクを負わずに、そして他人事として関わるということになるのですが、第三者的視点に立つからこそ、これまでの既存事業の取り組みや沿革をいい意味で重視過ぎずに新しい考えをもたらすことが出来るのです。

そして、それこそがコンサルティングファームに期待される価値でもあります。

ここで文房具メーカーさんがそもそもコンサルティングファームに相談する背景としては、自分たち自身ではいつも同じような議論に終ってしまい、新しいアイデアや市場の見方が出来ない、というものがあります。

そこで、新しい考えを検討するためにもあえて第三者を招いてみよう、というのが背景にあり、コンサルティングファームに相談をするわけです。

オーダーメイドなサービス

コンサルティングファームは、基本的に固まったプロダクトやサービスをそのまま顧客に対して提示するというスタイルではなく、顧客の置かれた状況に対して最適なサービスをオーダーメイドで提供します。

先ほどから例に出している文房具メーカーさん向けの新規事業創出の例でいえば、顧客が変わればコンサルティングファームが提案する内容ももちろん変わりますよね。何を提供するのか、というWhatの部分がオーダーメイドになるのです。

また、顧客の内部状況に合わせて柔軟にアプローチ、つまりHowの部分もオーダーメイドになります。経営層がトップダウンで意思決定をすることが通常の企業や、現場からの声が強くボトムアップで進めていくことが大事な企業だったりすると、どうやって企業全体として足並みをそろえて協力していくか、という部分が変わるわけです。

決まりきった製品やサービスを提供するのではなく、自分たちに最適なものを提供してほしい、というのも、コンサルティングファームを活用する企業の期待値となります。

高い専門性と知識

最後に、コンサルティングファームを他の事業会社と分ける要素は、高い専門性と知識です。これは、コンサルティングファームが様々なタイプの課題解決を過去に行ってきていて、多数の実績を積んでいることに起因する差別化ポイントです。

例えば、また文房具メーカーさんの新規事業創出の話に戻りますが、普通の事業会社であれば、新規事業創出を10年でどれくらい実施するでしょうか?

企業によっては毎年新たな事業をしています、というところもあるかもしれませんが、そうしたケースはレアですし、またそうした新規事業が既存事業と比較して同じレベルの収益規模になったケースはどれくらいか?と考えると、相当に比率は小さくなるはずです。

しかしながら、コンサルティングファームは多数の顧客をクライアントに持っており、これまた様々な種類の仕事を経験しているため、在籍しているコンサルタント全体で考えると、新規事業創出のポイントや、注意点、進め方などについて通常の事業会社とは比較できないほどの専門性と知識を持っているのです。

こうした高い専門性と知識も、企業がコンサルティングファームに相談を行う際の期待値となります。

 

どんな仕事内容をしているの?

主に仕事は3つに分かれる

それではここから、コンサルティングファームが言ったどんな仕事をしているのか、という点をざっくりとお伝えしていきたいと思います。細かく話すときりがないので、まずはイメージをつかんでいただくという意味で、大まかに3種類の仕事に分けて、解説していきます。

大まかにお伝えすると、企業の方向性を定める、あるいは何をすべきなのか、という問いに答えるための戦略策定・リサーチ

次に、既存の業務プロセスや現場の状況を改善していく、組織の姿を変革していく業務改善・トランスフォーメーション。

そして特定の課題を解消することを目的にした、システム・IT・デジタル技術の導入の3つです。

これらが大まかな仕事内容となります。あとで、もう少しイメージがわくように細かくお話をしていきます。

ちなみに、こうした仕事内容に応じてコンサルティングファームで働くコンサルタントの呼び方も微妙に変わります。

戦略策定、リサーチをしているコンサルタントの方であれば戦略コンサルタント、経営コンサルタント、またはビジネスコンサルタントと呼ばれ、業務改善・トランスフォーメーションをしている場合は業務コンサルタント、プロセスコンサルタント、トランスフォーメーションコンサルタント、そしてシステム、IT、デジタル系の仕事をしている場合はITコンサルタント、テクノロジーコンサルタント、デジタルコンサルタントと呼ばれます。

だんだん、カタカナが多くなってきましたね。

戦略策定・リサーチ

「何をすべきか?」に答える

それでは戦略策定・リサーチの仕事内容についてより詳しくお話をしていきます。

どうでしょうか、戦略策定やリサーチと聞いて、イメージは沸きますでしょうか。わかないですよね。

言い換えると、「何をすべきなのか?」という質問への回答を提出することが、ここでのコンサルタントに求められる役割です。

イメージを持ってもらうために、戦略策定・リサーチ関連の仕事内容においてカギとなる、顧客からコンサルティングファームへの質問文を取り上げてみましょう。

  • 新たな事業を創出したいのだが、どんな事業が既存の事業と親和性が高く、また今後の事業運営の観点で望ましいのか?
  • 事業規模の拡大を目的に、海外進出を行いたい。それに向けてどういった検討が必要になるのか?
  • 最近、競合他社に比べて売り上げが思うように伸びていない。売り上げ不振の理由は何なのか?また、どうやったら挽回できるのか?

こうした質問に対して、コンサルティングファームは回答として、「これをすべきです」という戦略を提出する必要があります。

見て頂ければわかる通り、例として取り上げた質問文は非常にあいまいで、様々な回答を考えることが出来ますし、様々な角度でいろいろな視点から検討をしていく必要があります。

回答を提案するにあたって、企業が置かれている状況や、競合の状況、市場全体の動きや、関連する業界の最近の動向など、様々な状況を合わせてリサーチする必要があるため、戦略策定とリサーチはセットで行われます。

場合によっては、戦略策定は自社でやるので、リサーチの部分だけお願いします、というようにコンサルティングファームに依頼が来ることもあります。例えば、スマートフォンの製造プロセスを見直したいので、海外の事例をリサーチして情報としてまとめてほしい、といった仕事内容ですね。

最終的にはレポートに仕上げる

戦略策定・リサーチの仕事では、最終的にどんなものを提出するのかというと、一言でいうとそれはレポートです。

100ページ超にもなる重厚長大なPPTファイルで出来たレポートが提出され、様々な分析内容と示唆、結論として何をすべきか、という内容と直近で取り組むべき活動、等を事細かにまとめ上げたレポートを作ることになります。

以下に、例としてそうした最終的に作り上げるレポートのアジェンダがどんなものになるのか、を書いてみます。顧客はコンビニエンスストアで、最近売り上げが落ちているのでその理由と改善策を考案してほしい、という依頼があったとします。

  • Agenda
    • 貴社の置かれている状況に対する弊社の理解(*弊社=コンサルティングファームのこと)
      • コンビニエンスストア業界全体の業績は堅調に伸長
      • 貴社の売上は業界全体の伸びを下回っており、原因特定と改善が急務
    • 本プロジェクトの背景と目的
      • 貴社の売上不振の原因特定、および改善策の考案を実施
      • 改善策の考案においては実行可能なアクションアイテムの提示と体制を検討
    • 本プロジェクトにおける活動概要
      • プロジェクト発足より1カ月で原因を特定し、2カ月で戦略を策定、実行可能なアクションアイテムを定義
    • 売り上げ不振の原因特定と分析結果
      • 業界全体の顧客のニーズの変化、競合の取り組み、自社の取り組み、を分析
      • 業界全体における顧客のニーズ変化の結果、中食の売り上げ規模が拡大
        • 貴社における中食カテゴリーの製品提供は限定的であり、販売機会の損失が発生しているものと思量
      • 他競合企業の取り組み状況としては、各店舗の需要データを分析するといったデジタル技術の導入が顕著
        • 貴社においては需要データの管理棟は各店舗に一任しており、パフォーマンスが不安定
    • 改善策の検討結果
      • 顧客ニーズの変化への追従、並びにデジタル技術の導入による店舗の管理が必要
      • ニーズ変化を追跡する手段としてPOS端末を活用した需要データの分析が有効
        • カード決済、電子マネー決済を通じてニーズを記録し、定量的に分析
        • 需要データを統一データ基盤へ連携し、Planningに活用
      • 店舗のマネジメント体制の刷新による全体最適化の実現
        • システム導入の効果を最大化させるための意思決定プロセスと裁量の再定義
        • 店舗の裁量を認めつつ定量的アプローチを各店舗へと実装
        • 全店舗のパフォーマンスを安定させ、高収益化を実現
    • 直近3カ月のアクションアイテム
      • ・・・
    • 参考資料
      • ・・・

最後のほうは省略しましたが、こんな感じでレポートを仕上げていくことになります。こうしたレポートを作るというのを3カ月で終える、といったことを戦略策定・リサーチの仕事ではするわけです。

こうした検討をするにあたって、コンサルタントは顧客と打ち合わせを設けてお話を聞いたり、市場に公開されているデータを見つけてきて分析したり、あるいは社内のエキスパートの意見を聞いたりして作業を進めていきます。

戦略策定・リサーチの仕事の流れ

最終的にどんなものを作るのか、という例を提示したところで、戦略策定・リサーチの仕事がどのように進んでいくのかをご説明します。

進め方としては、まずは計画、次いで検討開始、中間報告、修正、そして最終報告という流れが一般的となります。

  1. 顧客の相談事、解決しなくてはいけない課題について理解する(プロジェクト発足)
  2. 戦略策定・リサーチのアプローチを定義し、作業計画を作成する(どんなスケジュールで何に取り組むかを決めていく)
  3. 戦略策定・リサーチにおける検討の軸を複数決定し、合意する(調べること、調べないことを決める)
  4. 合意した検討の軸に従って調査、検討を開始する(公開情報の分析、知見を持つ方へのヒアリング)
  5. 調査状況、検討状況をまとめ、中間報告として状況報告する(ここまででわかったこと、そして今後のアクションを報告)
  6. 中間報告に対してフィードバックをもらう(今の方向で進めていくか、大きく変えるべきポイントが無いかを確認する)
  7. フィードバックに従って最終報告に向けて作業の修正を行う(もし調査、検討の方向性を変えなくてはいけない場合は対応する)
  8. 最終報告を行う(当初の目的に対する回答までまとめ上げ、提示する)

ステップ2と3についてですが、このステップが非常に重要になります。ここでは、作業の範囲として何を調査し、どんなことを検討するのか、逆にいうと何をしないか、というところを決めます。

こうした部分を決めることで、そのあとの具体的なアクションが非常にとりやすくなります。場合によっては、中間報告をしたときに「やっぱりこの視点でも調査、検討をしておくべきだったのではないか・・・」と顧客に言われてしまい、最終報告までの間に調査、検討を新たにし直す必要が出てくる、ということもあるのですが、そうしたことが発生しないようにあらかじめ最終的な報告内容がきちんとしたものになるようにイメージしつつ、何を作業として盛り込み、何をしないのか、という点を決めておくというのがこのステップ2と3に相当します。

いかがでしょうか。少しは、戦略策定・リサーチの仕事内容、イメージがわきましたでしょうか。

次に、業務改善・トランスフォーメーションの仕事内容について解説していきます。

業務改善・トランスフォーメーション

「どうやってより良くしていくべきか?」に答える

業務改善、トランスフォーメーションの仕事では、企業のとある業務や、制度などをよりよく変えていくという仕事をします。つまり、顧客からは「どうやったらより良くしていけるのか?」という質問を頂くことになります。

ここでも、具体的にはどんな相談事項が顧客からあることで仕事が始まるのか、という部分から見ていきましょう。

  • 新入社員が入社後3年で辞めてしまう。どうしたら、従業員の定着率が高くなるか?
  • 製造に係るコストのうち、労務費が非常に高い。どうしたら、もっとコストを抑えることが出来るか?
  • 製品の需要予測をして生産をしているのだが、予測の精度が非常に悪く、過剰在庫になっている。どうしたら予測精度を上げられるか?

戦略策定・リサーチの仕事内容のところで出てきた質問に比べると、すこし具体性が上がっていると思います。こうした質問に対して、コンサルティングファームは「このようにすることでより良くすることが出来ます」という回答と、さらには実際にそうした提案内容の実行支援が求められます。

ワークショップを通じて業務、制度、組織の変革を推進する

業務改善、トランスフォーメーションの仕事の特徴は、実際に提案した内容を実行する際にもコンサルタントが支援を行うことですが、これを推し進めていくときによくワークショップを実施します。

ワークショップというのは、関係者を色々と集めて数週間、場合によっては数カ月にわたって実施される会議のことで、このワークショップの実施を通じて企業の現状の理解を図ったり、どのような改善案が考えられるのか、という点を決定していきます。

その場では、コンサルタントはそもそもの目的が遂行されるように議論すべきトピックを洗い出したり、前提事項となる情報を調査したり、議論の場では話が横にそれないようにファシリテーションをしたりします。

また、議論に使用するための資料を事前に作成し、関係者に送ることはもちろん、議論の結果としてどのようなアクションを今後とっていくべきなのか、というまとめを行い、そのアクションがきちんととられていくようにフォローアップをしていく、ということも必要になります。

最終的には議論のまとめとして改善案をいくつか考案し、それらについてメリット、デメリットを複数の観点から評価し、関係者との合意に至る、そしてその実行の支援までしていく、というところまでを担当していきます。

例えば、需要予測の精度が悪いことが問題で、どうしたらより良い精度が出るのかを教えてほしい、一緒に考えてほしい、という顧客がいたとするならば、以下のようなトピックをワークショップで検討する内容として設定し、関係者を集めて議論をすることで解決策を決定していきます。

  • ワークショップ①:顧客が使用している需要予測について理解する
    • 一般的な需要予測の方法をコンサルティングファームから共有
    • 顧客において実施している需要予測の方法について確認
      • 需要予測をする際の手法、入力データ、パラメータ、情報管理の粒度、需要予測を行う頻度
  • ワークショップ②:需要予測の課題の原因を理解する
    • ワークショップ①で判明した課題の原因として想定されるものを議論する
      • 手法が取り扱っている品目の特性と合っていない
      • 入力データに外れ値、欠損値が多く含まれており、そうした異常値が取り除かれていない
      • パラメータが長年更新されておらず、最適化されていない
      • 需要予測の実施粒度がSKUレベルであり、ベストプラクティスである製品群レベルで実施していない
      • ・・・
  • ワークショップ③:改善案に対して優先順位を設定し、アクションアイテムに落とし込む
    • 想定される改善案品目特性を理解し、適用すべき需要予測の手法に分けてカテゴリー分けする
    • 入力データの加工を自動で実施する仕組みを実装する
    • パラメータを最適化する
    • 新たに定義したカテゴリーに準じて需要予測を行う
    • ・・・

この例では、ワークショップ①では現状を理解することにしています。ここで現状を理解するために、ワークショップの前にコンサルタントは可能な限り現場の業務担当者の方などから情報を仕入れておき、どういったことが現場では行われているのか、という内容を整理し、資料に落とし込みます。

現場では何が行われているのか、という点を事細かにまとめた資料などは存在していなく、暗黙知として浸透しているということが日本企業の例では多くあるため、こうした情報収集をするためには基本的に関係各社との打ち合わせでヒアリングをするという手法がとられます。

次にワークショップ②では、ワークショップ①で得られた現状に対する理解を基にして、発生している課題に対する想定原因を議論します。コンサルタントは仮設ベースで情報をまとめ、これまた資料に落とし込みます。そうして作った資料を基にして、顧客と一緒に「その仮説は正しい」あるいは「他にもこういったことが原因ではないか」といったコメントを頂くことになります。

何も資料が無い状態ですと、こうした議論さえできないのですが、コンサルタントが仮設ベースで課題の原因をまとめてくれることで、議論が進むようになるわけです。

そして、ワークショップ③では、コンサルタントが事前に検討した改善策を議論し、関係各社と取り組みにおける優先順位を議論し、具体的に取り掛かれるレベルのアクションアイテムに落とし込んでいく、ということを行います。

ここまでくると、あとは各部門やチームで個別に作業を進めていきましょう、ということになり、ワークショップはいったん終わる、個別に状況を管理していくということになっていきます。

なお、戦略策定、リサーチのプロジェクトにおいても関係者が多くなっているプロジェクトではワークショップを活用するケースはあります。

業務改善・トランスフォーメーションの仕事の流れ

ワークショップというものをうまく活用して仕事を進めていくということをご説明したところで、どのように業務改善・トランスフォーメーションの仕事が進んでいくのかを解説します。

  1. 顧客の抱える業務改善・トランスフォーメーションの課題について理解する(プロジェクト発足)
  2. 課題に対するアプローチを定義し、ワークショップの実施を含む作業計画を作成する(どんなスケジュールで何に取り組むかを決めていく)
  3. 初期的なヒアリングを通じて、現場の業務、組織、制度について理解する(キーメンバーとの打ち合わせを行う)
  4. ワークショップで議論するトピック、決定する事項をまとめ、スケジュールする(いつ、誰と、何を話し、何を決めるかを決める)
  5. ワークショップに向けて資料作成をし、ワークショップを実行する(関係者で同じ認識を持ち、改善案の検討の材料を収集する)
  6. 改善案を複数検討し、ワークショップの中で提示、優先順位を決める(複数ある改善案のうち、何から進めるかを決める)
  7. 改善案をアクションアイテムに落とし込み、担当者を決定し、個別に作業を進めていく(具体的に取り掛かれるアクションを進める)
  8. 状況を関係各社から集め、必要に応じて現場の支援を行う(実行支援)

ワークショップの実施が主な内容になるのですが、ワークショップの実施前にそもそも何を話し合うべきか、というトピックをきちんと決めてスケジューリングするというステップ4が非常に重要になります。

この時点で最終的な落としどころをあらかじめイメージした状態で何を話し合えばそうした結論に導いていけるか、という点を計画していないと、話し合ったものの何も決まらなかった、という時間だけ使ってしまう最悪のケースになり、そのあとの実行支援まで進めていくことが出来なくなってしまいます。

ちなみに、業務改善やトランスフォーメーションの仕事では週に2~3日程度はコンサルタントが顧客のオフィスなどに常駐し、一緒に作業を進めていくようなスタイルになることも一般的です。

お客様と一体になって仕事を進めることが出来て、また改善の結果などが目に見えるので戦略策定・リサーチよりもこっちの仕事のほうが面白い、ということをいう人も一定数います。

システム、IT・デジタル技術の導入

戦略、業務改善の方法としてのシステム、IT、デジタル活用を推し進める

最後に、 システム、IT・デジタル技術の導入の仕事内容についてお話しします。

システム、IT・デジタル技術の導入というと、コンサルティングファームではなくシステムインテグレーター(SIer)の仕事では?と思う方もいらっしゃるでしょう。

それは正しいです。正しいですが、コンサルティングファームがそうしたシステム導入を本業とする企業と違うのは、仕様を決めるというところから入るというところです。

いわば、SIerは企業から求められた、「この通りに作ってほしい」という仕様に従って、その通りにシステムを構築することが期待値になるのですが、コンサルティングファームはこうした仕様がそもそも決まっていない状況で「どうしたらいいのか相談に乗ってほしい」という相談に答えることが期待値になります。

ここでもやはり、コンサルティングファームに求められる価値は課題の解決である、ということです。

課題を理解し、システム、IT、デジタル技術に落とし込む

企業から投げかけられる課題に対して、システム、IT、デジタルの目線でどういったことをしていくのが良いのか、という回答を用意するのが システム、IT・デジタル技術の導入における仕事内容になります。

例えば、「データの利活用がうまく進んでいないので、どうにかしていきたい」という課題を顧客が持っているとしましょう。

この場合、課題はいくつかに分けられるのですが、どこから手を付けるべきなのか、何から始めていくべきなのか全くわからない、というような状態に陥っている企業の割合が非常に多いというのが現状です。

  • そもそもデータを取得する仕組みが無い
  • データはあると思うのだが、活用する方法がわからない
  • データはあるのだが、いろいろなシステムに散在していて一つの場所にないので比較などが出来ていない
  • データが部門ごとに違う扱いをしているので同じ意味でもデータが違うということがある

そうしたときに、コンサルティングファームであれば、課題をいくつかの要素に仮説ベースで分解し、どこからメスを入れていくべきか、という点の検討と、具体的にどんなシステム、IT、デジタル技術が使用できるのか、という点を提示することが出来ます。

仕事内容としては、まずは現状を理解し、課題を整理し、課題に対してどのようなアプローチをとることで課題解決に至るのか、という道筋を示し、具体的にシステム、IT、デジタル技術をどのように使用していくのか、というさらに詳細な検討に移る、ということを行います。

作業内容は、何をするのかを定義し、システム的に必要な処理や情報を定義し、設計し、構築する、というものです。

今回の例では、仮に販売関連のデータを集め、キャンペーンや販促活動がどのように顧客の購買活動に影響を及ぼしているのか、価格がどのように顧客の意思決定に関わるのかを把握できるようなマーケティング用の仕組みを構築する、ということになったとしましょう。

まずは何を行うのかという点について、既存の販売実績を管理するシステムから販売された品目の情報、数量情報、単価情報、日付、販売相手の情報を取得し、それらの情報を販売相手を複数のグループに分けて管理することで、どんな人が、どんなものを、いつ、いくらで、何個買っているのか、という情報がわかるようにする、と定義します。

こうして集めた情報と、キャンペーンや販促、値引きの情報を比較した結果を分析し、キャンペーンや販促によって販売数量の変化などが統計的に優位に表れているのかどうかを検証する仕組みを実装します。こうすることで、最終的に、キャンペーンや販促、値引きによって購買活動に変化が現れた品目や、販売相手の特性を見極めることが出来るようになり、今後はより有効にキャンペーンや販促、値引きを行うことが出来るようになります。ここまでが、顧客として実施していきたい内容となります。

次は、こうした構想を具体的にシステム、IT、デジタル技術の目線で検討していきます。まず、どこにどんな情報があるのか、そうした情報をどこに集約していくのか、外れ値や異常値があった場合はどう処理するか、品目情報はSKUレベルで分析するのか、それとも品目郡のようなグループにまとめていくのか、販売相手の顧客もどのような特性でグルーピングするのか、分析結果は最終的にどのような見た目にまとめられてほしいのか、等を事細かに決めていきます。

あとは、実際にシステム、IT、デジタル技術の実装を進めていくという流れになります。

手法はWater FallとAgileの2つが主流

やることが決まったら、あとは具体的にはシステムを構築していくということになるのですが、コンサルティングファームが使う手法が主に2つあるので、それをご紹介しておきます。

1つはWater Fallで、何を実現するのか、というものを決める要件定義、そしてそれをシステム的な目線で定義するシステム設計、そして構築、構築したものをチェックするテスト、という4つのフェーズをしっかりと期間を定め、前の工程が終わるまでは次の工程に移らない、ということをプロジェクト全体で厳密に守る手法です。

2つ目は、要件定義、システム設計、構築、テストを出来るところからどんどん始めていき、直すべきところが見つかったらまた要件定義からやり直すこともOKとするAgileアプローチです。

どちらがいいというものではないのですが、Water Fallは少し古い手法と言われており、開発のスピードが上がった現代ではAgileアプローチのほうがよくとられています。

システム、IT・デジタル技術の導入 の仕事の流れ

それでは、仕事の流れをご紹介していきましょう。

  1. 顧客の抱えるシステム、IT、デジタル技術導入の課題について理解する(プロジェクト発足)
  2. 課題に対するアプローチを定義し、作業計画を作成する(Water Fall、Agile等のアプローチとスケジュールを決める)
  3. 初期的なヒアリングを通じて、現場の業務、組織、制度、そして情報システムについて理解する(キーメンバーとの打ち合わせを行う)
  4. 要件定義、システム設計を実施する(個別の課題に対して、システム、IT、デジタル技術を導入することでどう対処するかを詳細に決める)
  5. 構築、テストを実施する(システム、IT、デジタル技術を導入の結果が当初の目的を達成しているかをチェックする
  6. 稼働、保守・運用(実際に構築したシステム、IT、デジタル技術を活用してみて、調整などを行っていく)

ここでは大まかな流れをご紹介していますが、規模が大きい場合などは、業務改善・トランスフォーメーションのセクションでご紹介したワークショップを行い、要件定義をしていくということもあります。

終わりに

いかがでしたでしょうか。コンサルティングファームの仕事内容、なんとなくイメージがわきましたでしょうか。

もしご興味おありでしたら、皆さんのキャリア形成のためにもコンサルティングファームは非常に良い選択肢になると思っていますので、学生さん、社会人の方のいずれにもコンサルティングファームの検討をおススメします。

本ブログでは、この他にもコンサルティングファームの仕事内容や実態、体験談について解説していますので、ぜひご覧になってください。

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