みなさん、こんにちわ。
SAPは、企業のさまざまな業務プロセスをサポートするERPパッケージとして知られており、多くの企業の日常業務に活用されています。
今回は、企業の購買や在庫管理といった業務をサポートするMaterials Management (MM)モジュールにおける重要なマスターデータ、Material Master(品目マスター)についてご紹介します。
MMモジュールでサポートされる業務との関りという観点で、Material Masterの基本的な活用方法や項目をいくつかご紹介しています。ぜひ、最後までお付き合いください。 なお、本投稿を作成するにあたって、こちらのYouTubeの内容を参考にしている個所があります。英語の内容にはなりますが、ご興味がございましたら、ぜひ見て頂けるとよいかと思います。
Agenda
想定される読者
- SAPコンサルタントやMMモジュールに興味がある方
- SAP導入プロジェクトで購買、在庫管理を担当する方
想定されるメリット
- SAPのMaterial Masterの基本概念が理解できる
- Material Masterが持つ基本的な項目が把握できる
SAPのMMモジュールとMaterial Master
SAPのMMモジュールは、購買や在庫管理など、資材管理に関連する業務をサポートするモジュールです。
資材というのは、商品や、製品、あるいはその原材料や部品を意味しており、Material Masterは、このMMモジュールで取り扱う対象となる製品や部品、原材料の情報を一元的に管理するマスターデータです。
Material Masterは、品目マスターとも呼ばれますが、Material (品目)というものが商品や、製品、あるいはその原材料や部品に相当します。
購買プロセスとMaterial Master
MMモジュールでは企業がものを購入する業務、購買プロセスがサポートされています。ここで、何を買うのか、という購買の対象データがMaterial(品目)となります。
Material Masteを作成しておくと、事前に整理されているデータの中から購入対象を選択する、ということが可能になります。
Material Masterは購入対象であるMaterial (品目)の詳細な情報を定義しておくことが可能となりますので、Material Masterを整理しておくことは日々発生する購買業務のたびに毎回、「どのようなものを購入するのか」という仕様情報などを指定する手間が省ける、というメリットを生むことになります。
また、Material Masterが持つ項目を用いて、購買のプロセスを分岐させるということも可能です。例えば、火器に相当する危険な性質を持つMaterial (品目)であれば、承認のプロセスを通常とは異なる形式にする、というような制御をかけることも出来、こうした業務の制御という面でもMaterial Masterは効果を発揮します。
在庫管理とMaterial Master
購買の対象となることからわかるように、Material (品目)は在庫管理の対象となるものを定義するマスターデータでもあります。
在庫管理をする際には、在庫管理における条件などを項目として設定することも可能です。例えば、安全在庫数量などを決めておけば、その数量を在庫数が下回ったときに自動で発注が行われるようにしておく、という設定が可能です。
Material Master上で保管を行う際の条件などを指定することも可能であり、これを用いて購買後の在庫の保管プロセスで適切な処理を行うように業務に対し得制御をかけることも可能となります。
イメージ紹介:FioriでのMaterial Master変更
Fioriを活用して、Material Masterを見てみましょう。検索ボックスに、「Material」と入力し検索を実行すると、以下のような画面となります。
Material Masterはマスターデータなので、基本的には「Create/作成する」、「Change/変更する」、「Display/参照する」というトランザクションが実行可能です。
Change Materialを選択すると、以下のような画面が表示されます。
Material (品目)には個別に識別番号があり、それがMaterial Numberと呼ばれます。Material Masterの中から、変更をかけたいMaterial Numberわかっている場合はこちらを入力します。
Material Numberがわかっていない場合は、複数の検索条件を用いて変更をしたい対象のMaterial (品目)を探すということも可能です。
これ以上の詳しい説明はここでは割愛し、Material Masterの基本的な説明を続けます。
Material Masterが持つ階層構造/View
Material Masterの情報は、多数の「View/ビュー」に分かれて管理されています。
このViewには、例としては購買、販売、会計、等のViewが存在するのですが、それぞれのViewでさらにMaterial Masterに設定する項目が別々に定義されています。
なぜこうしたViewを持つのかといいますと、その理由はMaterial (品目)が持つ情報は非常に多岐にわたるため、特定の業務やプロセスに特化した形で情報を整理・保存するためです。
こちらの投稿では、MMモジュールでのMaterial Masterについての解説を行っていますが、Material (品目)は販売する対象になることもあれば、製造する対象であることもあり、また請求や支払いなどの会計処理に関わることもあります。
このように、多くの業務プロセスに関与する性質を持つため、その業務プロセスごとに特有の設定値や項目があるため、こうした情報を効率的にわかりやすく整理するためにViewというものがあると考えて頂ければと思います。
どのようなViewがあるのか、簡単にご紹介します。全てのViewではない点はご了承ください。
基本View (Basic View)
基本Viewでは、Material (品目)の基本的な情報が管理されています。
ここには、品目の名称、基本数量単位などの項目が含まれます。このビューは、他の多くのビューや業務プロセスと密接に関連しています。
購買View (Purchasing View)
購買Viewでは、品目を購入する際の関連情報を管理します。
仕入先や購買の条件、リードタイムなど、購買に関する重要な情報が管理され、これらのデータは発注伝票の作成や購買契約の作成時に使用されます。
MRP View (MRP1〜4 View)
MRP Viewには、MRP:Material Requirement Planning (資材所要量計画)を行う際の情報が格納されます。
MRPを実行したときの挙動を制御するMRPタイプや、どこまで在庫が減ったら追加で補充を行うのかという発注点や安全在庫数量など、MRPの実行に使用されるパラメーターが多数管理され、このためMRP ViewはMRP 1 View、MRP 2 View、MRP 3 View、MRP 4 Viewと4つのViewが存在します。
Material Masterの作成画面 - MM01:Create Material
それでは、Material Masterにはどのような項目があるのか、例をキャプチャとともに確認してみましょう。
先ほどは、Fiori上でのMaterial Masterの確認画面をご紹介しましたが、FioriとSAP GUIで見ることのできる画面のレイアウトは同一であるため、ここからはSAP GUIの画面で解説をさせて頂きます。
Material MasterのViewと項目を確認するため、Material Masterの作成画面を見てみます。 SAPのトランザクションコードとして、MM01を入力しEnterすると、Material Masterの作成画面へ移行することが出来ます。
Material Masterの作成画面で最初にシステムから入力するように促されるのは、以下の3項目です。
- Material
- Industry Sector
- Material Type
Material / Material Number
画面上にはMaterialと記載がありますが、これは実際にはMaterial Numberのことである点に注意が必要です。
iPhoneという製品があるとしたら、その名称はiPhoneですが、Material Numberは「IP008901」などのように識別番号を指します。ここでは、こちらの識別番号を入力します。
Industry SectorとMaterial Type
Industry Sectorとは、業界、業種のことを意味しています。例としては、以下のような選択肢が標準で提供されています。
- A:Plant engineering and construction(プラントエンジニアリングと建設)
- C:Chemical industry(化学業界)
- M:Mechanical engineering(機械工学)
- P:Pharmaceuticals(製薬)
Material Typeとは、品目の種別を意味します。例としては、以下のような選択肢が標準で提供されています。
- FERT:Finished Goods(完成品)
- HAWA:Trading Goods(流通品、商品)
- ROH:Raw Material (原材料)
- HALB:Semi-Finished Goods(半完成品)
Material Masterを作成する際は、まずIndustry SectorとMaterial Typeという項目の2つを指定することになります。この項目は、Material Masterが持つことのできる項目を制御しています。
例えば、Industry Sectorに化学業界が選択されれば、化学業界にしか存在しない項目などが設定できるようになる、あるいは逆に化学業界では設定する必要のない項目が画面上には出ないように(入力されないように)することが出来ます。
同様に、Material TypeにRaw Materialが選択されれば、原材料としての性質を管理する項目が設定できるようになり、反対に原材料であれば設定不要な項目は画面に見えなくなる、という制御が可能となります。
Viewの選択とOrganization Levelの指定
必須の項目を入力した次の画面では、作成するViewを選択するように促されます。
Viewは、設定が出来るものが一覧で表示されるため、その中から作成する対象のViewを複数選択し、Material (品目)の詳細作成画面に移行することとなります。 ここでは、購買プロセスが実行できるようにするという目的で、基本View、購買View、MRP View、そして会計Viewを選択します。Viewは複数あるため、スクロールダウンして必要なViewをチェックしていきます。
Viewを選択すると、その後でOrganization Levelを選択するように促されます。
ここでは、Plantと、Storage Locationという項目をOrganization Levelとして入力していますが、まず、Organization Levelの選択とはどういうことなのかをご紹介します。
Material Masterには複数のViewがあるということをお伝えしましたが、このViewは組織別に複数持つことが出来ます。例えば、とある企業が大阪の拠点と東京の拠点を持っていたとします。
この2つの拠点では、同じMaterial (品目)を購入するのですが、拠点別にサプライヤーが別々に選択可能となっているとすると、サプライヤーが違うわけですから、発注してから納品されるまでに要するリードタイムも異なる可能性があります。
したがって、Material Masterには購買に要するリードタイムを入力する項目があるのですが、それが拠点や、組織別に異なる場合は、拠点や組織別にそれぞれ項目を持っておきたいという状況になります。
このように、組織によって異なる値を入力したい項目が存在する状況をシステムとして処理しているのがOrganization Levelとなります。
購買を行うときは、購買を行う拠点であるPlantや、保管場所であるStorage Locationそれぞれで、項目を別々に持っておいた方がいいものがあるため、Material Masterを作成する際にはこのようにOrganization Levelが分けられているのです。
具体的には、購買ViewはPlant(購買の拠点)ごとに分けられることとなり、MRP ViewはPlantとStorage Location (保管場所)のセットに対して別々に作られる設計となっています。
基本Viewの項目紹介
基本View (Basic View)に含まれる項目をいくつか、抜粋してご紹介したいと思います。基本Viewは、以下のような見た目となっています。
なお、ここでは、各項目についてかっこ”()”の中で日本語での呼び方を記載していますが、こちらはSAPが定めたものではなく、皆様に解説をするうえでわかりやすい用語にしたものでご紹介しています。名称をきちんと把握したい場合は、SAP Help Portal等で確認されることをお勧めします。
- Descr. / Material Description (品目の説明)
- Material (品目)の簡単な説明。製品、部品、原材料などの名称を入力する
- Base Unit of Measure (基本数量単位)
- Material (品目)の数量を計る際の基本単位。(個、kg、m、litre等)
- Material Group (品目グループ)
- 類似の製品や部品をグループ化するための分類(電子部品、金属部品等)購買活動の傾向などを分析する際にこのグループを使うことが出来るようになる
- Division (部門)
- Material (品目)が所属する企業の部門やビジネスセグメント
- Weight (重量) と Volume(容量)
- Material (品目)の重量やサイズを示す情報。
購買Viewの項目紹介
購買View (Purchasing View)に含まれる項目をいくつか、抜粋してご紹介したいと思います。購買Viewは、以下のような見た目となっています。
なお、かっこ”()”の中で記載している日本語での呼び方について名称をきちんと把握したい場合は、SAP Help Portal等で確認されることをお勧めします。
購買Viewにも、基本Viewで紹介した項目と同じものがあることが見て取れますが、これは基本Viewの項目は文字通り基本的な項目を集めたものであるため、他のViewとも共有されている項目を持っている、ということを意味しています。
また、購買Viewの冒頭にPlantが指定されていることがわかりますが、このMaterial (品目)は、Plantごとに異なる購買Viewを持つことが出来ます。そのため、Plantに別のPlantを指定した場合は、ここで紹介される項目はまた異なる設定をすることが出来るようになります。
- Orer Unit(発注単位)
- 発注する際の単位(Base Unit of Measureとは異なる設定が可能で、発注するときはダースで購入する、というルールが作れる)
- Purchasing Group (購買グループ)
- 購買活動を担当するチームや個人(特定の製品ラインを担当するグループ等)
- Batch Management(バッチ管理)
- Material (品目)の購入時や購入後にバッチ(製品ロット)の指定や管理を行うかどうかを決定する(チェックがついていると、バッチ管理の対象になる)
- Autom. PO (自動発注変換)
- Material (品目)について、購買要求が作成済みであった場合は自動で発注伝票に変換を行う対象とするかどうかを決定する(チェックがついていると自動変換の対象になる)
MRP Viewの項目紹介
MRP Viewに含まれる項目をいくつか、抜粋してご紹介したいと思いますMRP Viewは、以下のような見た目となっています。
MRP Viewには1から4までの合計4つがあります。MRP 4 Viewについては、Plantに加えStorage Location(保管場所)も指定することになります。したがって、Plantが異なる、あるいはPlantとStorage Locationの組み合わせが異なれば、MRP Viewは異なる値を持つことが出来ます。
なお、かっこ”()”の中で記載している日本語での呼び方について名称をきちんと把握したい場合は、SAP Help Portal等で確認されることをお勧めします。
MRP 1 ViewにはMRPを実行する際の一般的な項目が集められています。
- MRP Type (MRPタイプ)
- 使用するMRPの方法を指定する(MRPを実行しない、等も選択できる)
- Minimum / Maximum Lot Size (最小、最大ロットサイズ)
- 一度の生産や購入で生産・注文する最小または最大の数量を決定する
- MRP Controller (MRPコントローラー)
- MRPプロセスの実行や調整を担当する者やチーム
MRP 2 Viewには、MRPの結果として購買を行う場合、そして納品や生産のスケジュールを計画する際の項目が集められています。
- Procurement Type (調達タイプ)
- Material (品目)は組織内の生産で得られるか、外部から仕入れを行うのか
- Storage loc. for EP (外部仕入れの際のStorage Location)
- 外部から仕入れを行った場合に入庫するStorage Locationの指定
- In-House Production(内部生産リードタイム)
- 内部で生産を行った場合のリードタイム
- Planned Deliv. Time(納品リードタイム)
- 外部のサプライヤーから仕入れを行った場合のリードタイム
- GR Processing Time(受領処理時間)
- 生産、あるいは外部からの仕入れを行った場合に、生産や仕入れの完了から在庫として利用可能になるまでのリードタイム
MRP 3 Viewには、需要予測を行う際のパラメーターや、販売を行う際の利用可能性チェックに関する項目が集められています。
- Period Indicator(期間識別インディケーター)
- 計画を行う際の期間を指定する(Month、Year、Week、等を選択可能)
- Availability Check (利用可能性チェック)
- 製品の出荷や生産の可否を判断するためのルールや設定を指定する
MRP 4 Viewでは、BOM管理、製造関係の項目が集められています。
- Discontin. Ind.(製造中止インディケーター)
- 製造の中止が決定されている場合に使用する
- Follow-up Material(後継品目)
- 後継の品目を指定する(製造の中止が計画されている、等の場合に活用sレることが多い)
会計Viewの項目紹介
会計 View (Accounting View)に含まれる項目をいくつか、抜粋してご紹介したいと思います会計 Viewは、以下のような見た目となっています。
会計Viewにも、1と2があり、それぞれで異なる項目を設定します。
なお、かっこ”()”の中で記載している日本語での呼び方について名称をきちんと把握したい場合は、SAP Help Portal等で確認されることをお勧めします。
会計Viewには、財務会計関連の項目が集められています。
- Valuation Class (評価クラス)
- Material (品目)の会計処理を決定する分類を指定する(購入などの取引を正確な勘定科目に転記する際に活用される)
- Standard Price (標準価格)
- 原価計算で活用される標準価格
- Moving Average Price (移動平均価格)
- Material (品目)の取得や生産に関連する実際のコストに基づいて計算される価格(取引のたびにこの価格は再計算される)
- Price Unit (価格単位)
- 価格が適用される数量(1であれば1個当たりの価格設定がされ、10であれば10個あたりの価格が設定される)
終わりに
いかがでしたでしょうか。Material Masterがどういうものなのか、イメージを持って頂けたら幸いです。