皆さん、こんにちは。
SAPは多くの機能やモジュールを持ちます。
今回の投稿では購買、在庫管理などの業務に利用される「Materials Management (MM) モジュール」の機能を解説していきます。
今回の投稿で取り上げる内容はMMモジュールの持つ、以下4つの機能です。こちらの4つについて、Fioriを活用してどのように画面を操作し、業務を進めていくのかという手順をステップバイステップで解説します。なお、各ステップで活用される項目や必要となる事前設定やデータの内容についての詳細な説明は割愛し、まずはどのような機能があるのか、どのような業務が実行できるのか、という点について解説をしておりますのでそちらはご注意ください。
- 購買発注伝票(Purchase order)の確認を行うステップ
- 購買発注伝票(Purchase order)の作成を行うステップ
- 購買発注伝票(Purchase order)に対する受領処理(Goods Receipt)を行うステップ
- 請求書(Supplier invoice)の登録を行うステップ
これらのステップを通して、MMモジュールの基本的な操作感や業務を理解して頂けるかと思います。実際のFioriの画面キャプチャを交えながら分かりやすく解説していきますので、初心者の方でも安心してご理解頂ける内容となっています。
なお、本投稿を作成するにあたって、こちらのYouTubeの内容を参考にしている個所があります。英語の内容にはなりますが、ご興味がございましたら、ぜひ見て頂けるとよいかと思います。
それでは、ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。
Agenda
想定される読者
- SAP S/4HANAの導入を検討している企業の購買部門のご担当者
- SAPに関する知識や、MMモジュールの基本的な操作や業務フローを把握したい方
想定されるメリット
- 購買業務の理解:発注伝票の確認、作成、請求書の登録など、基本的な購買プロセスを行うための具体的なステップを学ぶことができます
- 画面キャプチャを通した実践的な学習:SAP S/4HANAの実際の画面を見ながら操作方法を理解することで、学びやすさと実践への適用性が高まります。
購買発注伝票(Purchase order)の確認
まず、既に作成された購買発注伝票を確認するという業務について、解説を行います。業務の流れは主に以下の通りとなります。
- 購買発注伝票の一覧へアクセス
- 「Purchase Order Processing」タブを選択します
- 「Manage Purchase Order」アプリをクリックします
- 購買発注伝票の検索
- 特定のベンダーなどで検索を行います
- 購買発注伝票の詳細情報の閲覧
- 検索結果から詳細を確認します
購買発注伝票の一覧へアクセス
まず、SAP Fioriのメイン画面から「Purchase Order Processing」タブをクリックします。これにより、購買発注伝票関連の機能へアクセスすることができます。
こちらはSAP Fioriの画面です。様々な機能がタイル形式で並べられていることがわかります。
発注伝票を確認するため、Purchase Order Processingのタブをクリックします。
ここには購買発注伝票に関連する機能がタイルとして並べられています。その中で、「Manage Purchase Order」アプリを選択し、購買発注伝票の一覧や詳細情報の確認を行う画面へと切り替えを行います。
発注伝票に関係する機能を集めたタイルが並んでいますので、Manage Purchase Orderをクリックします。
購買発注伝票の検索
次に、特定のベンダーや期間などを基に購買発注伝票を検索します。
例として、「IKO」というベンダー名を検索窓に入力し、関連する購買発注伝票を検索しています。
検索結果が一覧表示されており、ここから個別の購買発注伝票を確認する画面に切り替えることが出来ます。
購買発注伝票の詳細情報の閲覧
検索結果から、詳細を確認したい購買発注伝票を選択すると、伝票の基本情報や商品の詳細、金額、納期などの情報を閲覧することができます。
以上が、既存の購買発注伝票を確認する際の手順でした。
購買発注伝票(Purchase order)の作成
それでは次に、新規に購買発注伝票を作成するという業務について、解説を行います。業務の流れは主に以下の通りとなります。
- 購買発注伝票の新規作成画面へアクセス
- Purchase Order Processing」タブを選択します
- Fioriの「Manage Purchase Order」アプリにアクセスします
- ヘッダーデータの入力
- 購入組織、会社コード、購入グループなどの情報を入力します
- 商品の追加
- 商品や材料を検索または直接入力し、追加します
- 詳細情報の入力、購買発注伝票の保存
- 選択された商品に関する詳細情報を入力し伝票を保存します
購買発注伝票の新規作成 画面へアクセス
Fioriの「Purchase Order Processing」タブを選択し、「Manage Purchase Order」アプリを開き、「+」ボタンをクリックして新規に購買発注伝票の作成を開始します。
ちなみに同じ画面で既存の購買発注伝票に対してチェックを入れコピーする、あるいは削除する、というアクションも可能です。
ヘッダーデータの入力
赤い星マーク(*)で示されている必須項目を入力します。
購買組織(Purchasing Organization)を入力してみます。
全ての文字を入れなくても、途中まで入力を進めると候補が出されるのでその中から選ぶことが出来ます。
購買組織(Purchasing Organization)を入力すると、関係する会社コード (Company Code)が自動で入力されました。
その他の必須情報として、サプライヤー (Supplier)、通貨 (Currency)、購買グループ(Purchasing Group)なども入力していきます。
商品の追加
ここまでの情報入力は購買発注伝票のヘッダー情報でしたので、これからは明細情報を入力していきます。
明細について、「+」ボタンを押すと、何を購入するのか、という商品の情報の情報を入力することが出来ます。SAPでは、こうした商品のことを品目(Material)と呼びます。
品目コードがわかっている場合は、それを直接入力することも出来ますが、検索窓を活用して検索した結果を活用することも出来ます。
品目 (Material)を指定して、購入する対象を決定しました。
なお、Plantは納入先の拠点、工場、倉庫を意味します。数量を入力すると、金額が自動で計算されました。
詳細情報の入力、伝票の保存
明細に対して詳細情報を入力することも出来ます。必要に応じて、細かな指定をしていきます。
画面端の”>”をクリックします。
こちらは品目の詳細です。 指定した品目(Material)の情報から自動で取得され、各項目に入力済みとなっている内容が多い状況となっています。
こちらは納入先住所の詳細です。このケースではあまり多くの情報が入っていませんが、事前にデータを整備することでもっと詳しく納入先住所の情報が記述されるようにしておくことも出来ます。
Process Controlという欄には、受領するのかどうか(Goods Receipt)、請求書を受け取るのか(Invoice Receipt)という内容を理解するための項目が表示されています。
この画面上で変更できるものもあれば、事前設定の結果として、自動で入力された後はこの画面では動かせない、という性質のものもあります。
Pricingの個所では、金額を計算した過程が記述されています。
割引などが適用されると、ここで数%OFF、という記述が加わることになります。
Schedule Lineには、いつが納入予定なのか、という点が記載されています。
指定した日付を入れておくことも出来ますが、今回は指定を行わなかったため、納品リードタイムを考慮して最短の納入予定日が表示されています。
これらの情報を一通り確認したうえでOrderをクリックすると、購買発注伝票が作成されました。
購買発注伝票(Purchase order)に対する受領処理(Goods Receipt)
それでは次に、作成した購買発注伝票に対して、商品が納品されたため、受領の処理を行うという業務について、解説を行います。
受領の処理を行うと、在庫の動きを示す入出庫伝票というものが作成されます。業務の流れは主に以下の通りとなります。
- 受領処理の実施画面へアクセス
- 「Warehouse Processing」タブにアクセスします
- 「Post Goods Receipt for Purchase Order」アプリをクリックします
- 購買発注伝票の検索、選択
- 伝票番号や品目・サプライヤーの情報で検索を行い、受領処理を行う対象を特定します
- 購買発注伝票の詳細確認、入出庫伝票の転記
- 数量や保管場所を確認し、入出庫伝票 (Material Documenmt)の保存をします
受注処理の実施画面へアクセス
「Warehouse Processing」タブに移動し、「Post Goods Receipt for Purchase Order」を選択します。
Postというのは転記するという意味で、Goods Receiptは受領書、あるいは受領という移民ですので、このアプリで出来ることは購買発注伝票に対する受領の記録を行う、という意味になります。
Amazonでの商品購入を考えて頂けるとわかりやすいかと思いますが、購入した商品が到着すると、その商品を梱包した段ボールには納品書などが添付されています。こちらの書類には、購買発注伝票の番号が記載されています。 これを見ることで、どんな発注に対して商品が届けられたのか、という点がわかります。このケースでも同様に、どの発注に対して今から受領処理を行うのか、という点をシステムに入力していくこととなります。
購買発注伝票の検索、選択
受領の処理を行うには、対象の購買発注伝票を指定する必要があります。初めに検索画面が登場しますので、これを用いて対象の伝票を特定し、選択します。
Goods Receipt(受領)を行う対象のPurchase Orderを検索します。もし、伝票の番号がすでに分かっている場合は直接入力してもかまいません。 この受領処理を行うのが実際に受け取りを行う作業者の方であれば、手元に納品された商品と納品書があるかと思いますので、その内容を確認したうえで受領処理の対象となる購買発注伝票の番号を確認し、選択することになります。
伝票の番号がもし不明であれば品目などの情報で検索をすることも出来ます。検索窓に品目、サプライヤー、等の情報を入力し検索した結果の中から対象の購買発注伝票を選択します。
購買発注伝票の詳細確認、入出庫伝票の転記
購買発注伝票を選択すると、何が受領されるのか、という関連する情報が自動で取得されます。毎回、今からこの商品を何個、受領します、と入力する必要はありません。
今回は割愛しますが、発注した数量の全てが納品されず、部分的に納品されるという分納のケースでは、購買発注伝票から取得した数量を変更する必要が出てきます。
購買発注伝票に十分に情報がなかった場合、受領処理を行う際に情報を追加で入力することもあります。 ここでは、Storage Locationという項目を受領処理のタイミングで入力することになりました。Storage Locationとは、納入先拠点であるPlant(工場や倉庫)の中の、さらに細かな保管場所に相当します。
Storage Locationが正しいことを確認して、Postをクリックすると、受領の処理が行われます。受領処理を行うと、入出庫伝票という伝票が作成されます。これは在庫が計上されたということを計上するための伝票です。
Document Typeという項目を見ると明かるように、こちらの入出庫伝票はGoods Receiptと記述があるので、入庫、あるいは受領を行ったということがわかるようになっています。 更にスクロールしてみていくと、Document Flowが確認できます。
こちらでは、前工程として購買発注伝票が作成されていたということに加え、後工程として会計伝票 (Accounting Document)が作成されていることがわかります。
いつ会計伝票なんて作ったの?と思われるかもしれませんが、実は入出庫伝票の作成と同時に自動で作成されているのです。
入出庫伝票とは、受領をしたことを記録するための伝票でしたが、これによって在庫が増えます。在庫が増えたなら、それを会計転記しておく必要があります。 こうした自動の伝票作成は、在庫となる商品を受領するときは在庫を計上するという処理をする、という自動会計仕分けの機能を活用しておくことで実現できています。
請求書(Supplier invoice)の登録
購買発注伝票の作成後、注文した商品が受領されたら、次に請求書を受け取ることとなります。
請求書は納品された商品に添付されていることが一般的ですので、その請求書をシステムに登録するという作業を解説します。
- 請求書の登録画面へアクセス
- 「Supplier Invoice Processing」タブにアクセスします
- 「Create Supplier Invoice」アプリをクリックします
- ヘッダー情報の入力
- 請求先や請求日等の基本情報を入力します
- 購買発注伝票の検索、選択
- 請求対象の購買発注伝票を選択します
- 明細の確認、金額の入力、請求書の登録
- 購買発注伝票の情報や注文履歴を確認し、請求金額を入力し、登録します
- 請求書の内容確認
- システムに登録された請求書を確認します
請求書の登録画面へアクセス
「Supplier Invoice Processing」のタブを開き、「Create Supplier Invoice」のタイルをクリックします。
購買発注伝票を送ったサプライヤーから、商品の納品の後、あるいは同時並行的に支払いを要求する請求書が届きますので、これをシステムに登録します。
ヘッダー情報の入力
請求先の組織、請求の日付などの基本情報を入力します。Gross Invoice Amountは、請求総額を示す項目ですが、この段階ではまだ入力を保留しておきます。
Invoicing Partyは請求を行う主体のことを指し、ここでは請求書を送付してきたサプライヤーを指します。
請求書が届いていれば、それを確認して必要な項目に入力するということになりますが、これも受領書の時と同様に、請求の対象となる購買発注伝票が存在しますので、この購買発注伝票の情報を入力していくことで大半の項目は自動で取得されます。
Referenceは、参考情報として入力するものであり、よくある活用方法としてはサプライヤーが作成した請求書に独自の請求書番号が記述されているときは、その番号を入力することがあります。
購買発注伝票の検索、選択
請求対象の購買発注伝票を選択し、そこから自動で情報を取得します。
請求書を登録する際の対象となる購買発注伝票の番号がわかっている場合はそれを入力しますが、不明であれば検索を活用することも出来ます。
請求されている対象の購買発注伝票を探し、選択します。
仮に、複数の購買発注伝票に対して1つの請求書が届いた場合は、この画面で複数の購買発注伝票を選択し、まとめて請求書の登録を行うことになります。
明細の確認、金額の入力、請求書の登録
購買発注伝票の情報や注文履歴を確認し、請求金額を入力します。
明細の”>”をクリックすると、購買発注伝票から取得した情報の詳細が確認できます。
Purchase Order Historyという箇所には、いくつを注文して、そのうちいくつが受領されたのか、そしていくつが請求されたのか、という情報が記述されています。
Open Quantityというのは、請求書の登録がまだ完了していない数、ということを意味します。ここでは、7つ注文し、7つが受領済みであるが、そのうち請求がされているものはまだない、ということがわかります。
金額の入力を行います。実際に届いている請求書の金額をこちらに入力していきます。
金額の入力を行う前の状態では、請求されるべき金額と、このGross Invoice Amountという項目の金額間でUSD77.00の差異が発生している、ということがわかります。
Gross Invoice Amountに金額を入力して、Checkをクリックします。
Checkをクリックした結果、金額の差異がなくなっていることが確認され、このまま請求書の登録をすることが出来るとわかりました。
Checkをクリックすると、金額の差異以外にも様々な不整合の有無が自動で検出されます。
問題がないことが確認されたら、Postをクリックすることで請求書が登録されます。
請求書の内容確認
登録された請求書を確認してみます。「Supplier Invoice List」をクリックします。
作成されている請求書が一覧で確認出来るようになっています。条件を入力して、絞り込みをかけることも出来ます。
“>”をクリックし、請求書の内容の詳細を確認します。
先ほど登録した請求書の内容が表示されました。
明細を確認し、“>”をクリックしてさらに詳細を確認することが出来ます。
請求書の登録時点では、Open Quantityが7でしたが、請求書を登録した後ではこちらは0となっていることがわかります。
以上で、請求書の確認が完了しました。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
SAPのMM:Materials Managementのモジュールを活用して、購買発注伝票の登録、受領の処理、そして請求書の登録という業務を行うイメージがつかめましたでしょうか。
各項目の意味や、これ以外の業務シナリオについても随時解説を行っていきます。ぜひ、お付き合いいただけますと幸いです。