今回の投稿では、業務フローの書き方を解説していきます。
今、私の会社はIPOを目指していて社内のルール作りを頑張っているところで、
まさに業務フローを書いているところになります。
上場を目指す企業のコーポレート部門の方、上場を支えるコンサルタント、
監査法人、金融機関の方々は
その企業が上場する企業としてやっていけるのかどうかを判断する際の
一つの指標として、業務フローを確認します。
また、上場会社に限らず、システム導入を行う立場の人であれば、
システムがサポートすべき業務を把握するために
確認するものといえば、業務フローとなります。
もし、業務フローを書く必要に迫られているかたがいましたら、そんな方々の
お役に立てれば幸いです。
(2021/09 追記:SCM関連の投稿をまとめ直しました)
SCM関連の投稿をまとめ直しました。ご興味ありましたら、こちらの記事をご確認ください。
購買管理関係の業務フロー、スイムレーンなども更新をかけて解説していますので、もしご興味ありましたらご確認頂けますと幸いです。
Agenda
業務フロー、スイムレーンの書き方
想定する読者
- IPOを目指した組織を目指していて内部統制を機能させるため、
適切な業務フローを定義する必要のある方 - 監査法人、あるいは金融機関にお勤めでクライアントの内部統制を
評価する必要のある方 - システム導入に関わることになり、業務フローを定義する必要のある方、
コンサルタントの方
想定するメリット
- 業務フローとは何かがわかる
- 業務フロー(スイムレーン)の書き方、凡例がわかる
- スイムレーンのテンプレート、スイムレーンの例がわかる
コンサルティングファームへの転職に関するKindle本、お仕事紹介/転職相談サービスのご案内
コンサルティングファームへの転職経験をもとに、フェルミ推定の対策方法、基本解法パターン、演習問題、面接官とのやりとりの例や覚えておくべき数値情報などを取りまとめているKindle本を公開しています。ぜひご覧頂けると幸いです。
また、コンサルティングファームへの転職や新卒入社を目指す方向けに、お仕事の紹介や採用面談に関する相談を受け付けています。こちらもご興味頂けましたらご覧頂けますと嬉しいです。
業務フロー、スイムレーンとは
組織の業務を終わりから始まりまでがわかるように繋げたもの
業務フローとは、業務のつながりを示すものになります。
業務には、始まりと終わりがありますので、その間に誰が何をやるのか、
そしてその時に使うシステムは何なのか、
これらの業務のつながりを説明したものが、業務フローとなります。
業務フローは、アクションのつながりを把握するためのものなので、
業務マニュアルのような1ステップごとの記載にはなりません。
例えば、「システムAにログインする、Indexのなかから購買をクリックして、購買要求をクリックし、画面が移り変わるのを見る」、
などという内容は業務マニュアルであり、
業務フローで示す粒度ではありません。
どの程度の粒度まで記載するのかは、後述します。
組織とアクションで書いたものが、スイムレーン
先ほどから何度か出てきていますが、スイムレーンというのは、
業務フローを組織とアクションの関係がわかるように書いたものになります。
よくある例では、縦にアクションを担当する組織を並べ、
横にその組織が実施するアクションを並べて記載していく、というものです。
PPTを使う場合は横長になるので、縦に組織が並び、左から右に向かってアクションが流れていく形式をとります。
監査法人、金融機関のレビュー対象となる
業務フロー、スイムレーンは、監査法人、金融機関のレビュー対象となります。
観点としては、統制をかけるために適切に職務分離がされているか、
あるいは購買などの行動が適切な承認プロセスにかけられているか、
といった点です。
例えば、購買のアクションを、要求、発注、受け入れ、検収、
支払いまですべて同じ組織の人間ができて
なおかつ承認プロセスも不要というような状態では、会社のお金を使ってAmazonで何かを購入し、
自宅に届けて請求関連の書類はわざと紛失させる、
ということができてしまいます。
こんなことになっている会社は統制がきいていないので、
上場に値しませんし、資金提供もできない、というような判断がされます。
業務フローは、会社がきちんと運営されるような体制を持っているか、
判断の差異の指標の役目を持ちます。
システム導入の際の元ネタになる
システム導入の面でも、業務フローは重要となります。
購買管理、販売管理などのシステムを入れる際に、ど
んな機能が必要なのか、そしてどのようなカスタマイズが必要なのかを
知るために、システム導入コンサルタントは業務フローを見る、
あるいは作ることになります。
例えば、購買発注は人間が作成した場合は承認プロセスに回すが、
需要予測システムが作成したものであれば
そのまま取引先へ注文書を提出する、などのフローの違いが分かれば、
それをシステム制御をかけるべき対象として認識することができます。
業務フローを正しく理解できていない状況では
システム導入は絶対にできないといえます。
3レベルで書く!レベルごとの凡例説明
3レベルで記載し、抜け漏れを防ぐ
それでは、ここから業務フローをどのように書いていくのか、説明します。
まず、重要なことは、3段階に分けて記載するということです。
以下に、3段階の業務フローで記載する内容を図解しています。
3段階で記載する理由は、それが業務の抜け漏れがないことを
把握するために必要だからです。
大きい粒度からだんだんと細分化することで、いきなり細かな
粒度から作っていくと見えてこない業務プロセスが見えてきます。
L-1プロセス:部門レベルの業務内容
一番大きい粒度であるレベル1:L-1プロセスは、その会社で
行われている業務を部門レベルで記載します。
販売、購買、製造、会計、などの粒度です。
ここまではほぼほぼの会社で同じになるでしょう。
L-1はフローではありません。
L-2プロセス:部署レベルの業務内容
次のレベル2:L-2プロセスでは、L-1プロセスを細分化した業務を
書いていきます。
目安としては、部門の下位組織である部署が移り変わるまでを
一つの業務として、それらの業務が
どのようにつながっているかを記載します。
L-3プロセス:部署の責任者、担当者レベルの業務内容
そして、L-2プロセスをさらに「誰が何をするか」レベルに
細分化したものが、L-3プロセスとなります。
部署を、さらに責任者と担当者レベルで分割し、記載していくことになります。
レベル3がもっとも重要
一般的に、業務フローと言って想起されるものはL-3のプロセスです。
この粒度で、統制の存在の確認や、システム導入の検討が行われるからです。
L-3は、L-1、L-2と異なり、業務フローを記述する際に
使用するオブジェクトが増えてきます。
以下に、L-3で使用するオブジェクトの凡例と、
それを使ったスイムレーンの例を載せます。
私がコンサルティングファームでシステム導入、
そしてIPO準備のために作成した業務フローの判例は、このような形式でした。
重要なのは、定義した凡例を使い、忠実に定義を守ること
少し調べて頂ければわかりますが、もっといろいろな凡例が
使用されている業務フローもあります。
しかし、凡例が多くなりすぎるとパッと見ただけで業務が
つかめなくなりますので、可能な限り凡例は減らす努力をするべきです。
重要なのは、業務フローを説明する前に上記に示したように
まず凡例を定義し、その定義された凡例の使用方法を
忠実に守りながら業務フローを記述していくことです。
業務フローというのは、凡例の説明も併せて業務フローなので、
ドキュメント内での一貫性を保つことに神経を使いましょう。
レベル4も作るときもあるが、粒度が細かすぎるので任意、マニュアルの立ち位置
レベル4、L-4プロセスを作成することもあります。
しかし、L-3プロセスで書いた一つのアクションは分岐することもなく、
一本道になることが大半です。
したがって、L-4プロセスはつくらず、かわりに業務マニュアルの
ように文章で記述がされている形式をとることが一般的です。
スイムレーンの記載ルール
組織とアクションで表現する
では、スイムレーンの記載方法の基本を見ていきましょう。
スイムレーンの図を再掲します。
まず、縦に組織を取り、横にアクションを並べていきます。
縦長に作りたいときは、縦横が逆になりますが、PPTファイルを
使って記述することが多いので、例では横長にしています。
分岐や、自動で発生するシステム処理などはどこの組織の行に
いてもいいのですが、見栄えの点で直前の組織の行と
同じところにするとよいでしょう。
上から下に、左から右に、
流れは、人間がものを見るときの自然な目の動かし方に沿うことにして、
上から下へ、左から右へ流します。
矢印が出ていく位置と刺さる位置ですが、これは好みによりますが人によってはオブジェクトの左右だけにしたいという方もいます。
そうすると横に長くなっちゃうんですけどね。
スイムレーンは、各アクション、分岐の詳細説明とのセットとする
スイムレーンでは、業務の詳細については説明しきることができません。
そこで、業務のつながりを示すスイムレーンと一緒に、各業務の詳細を
説明する業務概要説明が必要となります。
以下に、購買関係のスイムレーンと、その説明となる
業務概要説明のセットの例を示します。
終わりに
業務を理解できると、その会社の中身がわかります。
業務を理解することは、会社の強みを理解することにもつながり、
またどこに改善点があるのかを把握することにもつながります。
そして、業務を理解するには、フローで理解することが必要であり、
フローを作ってみることは何よりも理解につながります。
具体的な業務フローは、今後作成して公開していきたいと思っています。
本投稿が、業務フローを作成する必要性に迫られている方の
ご参考になれば幸いです。