ケース面談でよくある問題の中に、「XXという企業が新たにYYという市場に参入することを検討している。そこであなたは市場参入をするにあたってどのような内容を検討するべきかと聞かれた。なんと答えるか?」というものがよくあります。
今回は、このような形で新たな市場へ参入しようとしている顧客がいるときに、どんなことを検討するべきか、と聞かれたときの一般的な検討ポイントをまとめていきたいと思います。
もちろん、顧客がどんな事業を営んでいるのか、といった前提を確認することによって検討すべきポイントは変わるのですが、基本的にはこういったことを検討するよね、という内容は抑えておいて悪くはないと思いますので、お付き合い頂けたらと思います。
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参入するかどうかを考えるときは、勝機から考える
参入することがまだ決まっていないのでされば、まずは参入するかどうかを決めるための検討をします。一言でいえば、参入することでメリットがあるか、勝機があるのかどうか、これが重要になります。
ここから始めると、以下のように質問、ないし検討事項が出せるでしょう。
あれ、競合とかはそこまで確認しないの?と思われるかもしれません。
私としては、競合の確認は参入することを決めた後の詳細検討かと思っておりますので、まずは参入することで目的が果たせそうなのか、という観点から検討をしていくとよいかと考えています。
目的
まずはなにより、目的ですね。売り上げなのか、利益なのか。それとも、シナジーを既存事業との間で創出し、既存ビジネスのほうも伸ばしていくことが目的なのか。
こうした目的を抑えることは、ケース面談を進めていくための質問を考えるうえでももちろん重要ですし、新規市場参入の検討をするうえではこの目的が達成できるのかどうかで、参入するべきか否かの答えが決まります。
顧客
誰が顧客なのか、そしてその顧客は充分に市場にいるのか、成長している市場なのか、確認することが重要です。顧客が全くいない、あるいはいても今後伸びない市場に参入しても意味はないですからね。
また、顧客については見込み顧客がどういった人たちなのか、市場全体ではなくセグメントでとらえるべきです。年代で別れるのか、あるいは地域で別れるのか、年収などで別れるのか、いろいろとセグメントはありますが、特にどういったセグメントの顧客が自社にとって重要となるのか、あたりを付けることが重要となります。
顧客という観点では、新規参入する際にはどうやってその顧客にコンタクトしていくのか、これも重要になります。コンタクトするのもただではできませんから、コストの観点でも検討が必要になります。
収益
顧客がわかったら、具体的にどの程度の収益が見込めるのか、が次に知りたいところです。目的は既に確認していますが、これが売り上げ出ではない場合は確認しなくてもいいかもしれませんが、売り上げはあるに越したことはないので、確認しておいて損はないでしょう。
セグメント情報を既に入手しているのであれば、そのセグメントごとにどの程度の収益が見込めるのか、考えてみることも重要です。
コスト
最期に、コストです。市場参入の目的が利益なのであれば、売り上げだけでなく当然コストも必要になってきます。ここでは、参入した際に継続的に必要になってくるコストと、初期投資として必要になるコストを確認する必要があります。
これを確認すると、想定される利益と初期投資の額がわかるので、ROICなども計算できるでしょう。もし、自社内でROICについての指針があって、それを上回っていないと参入は許さない、といったポリシーがあるのであれば、それとの比較もしてみるべきでしょう。
これらの4つの観点から検討を行うことで、結果として、クライアントの目的が何で、その目的を果たすために顧客が十分に参入検討対象の市場にいるのか、そしてその顧客から予想される収益、コストから利益を生むことが出来るのか、これが判別できます。
もちろん、クライアントの目的が売り上げだけなのであれば、コストについては確認対象ではなくてもよいかもしれません。
ケース面談においては、これらについて確認していきたい、というアプローチについて全体像を説明をした後で、具体的に「XXについてはどんな情報があるでしょうか?」と質問していくとよいかと思います。
参入することが決まっている場合は、基本のフレームワークから
参入することが既に決まっている状況で、何をしていったらいいのか、と考える場合には、Product, Customer, Company, Competitorの基本フレームワークから考えるとよいかと思います。
Product
まずは、いったい何を提供するのか?という点です。製品、あるいはサービスとして、どんなものを提供していくのか。顧客はなぜそれを選ぶのか。
バリエーションおよび価格と、提供形態はどういったものにすべきか、これは競合との比較でも検討していくべきポイントとなります。
Customer
次に、ターゲットとなる顧客を改めて明確にし、その顧客に選ばれる製品であるかどうか、という視点を持ちましょう。
もうわかっている場合、ここはスキップしてOKですが、ターゲットとなる顧客セグメントが何で、市場の何割を占めていて、どんな特徴を持っているのか、何を求めているのかは把握することが必要です。
Company
次に、自社は市場への参入において適用できるケイパビリティ―を保有しているのか、という点で確認を行います。うまく自社のアセットを活用できるとベターです。
自社のアセットの例としては、拠点(販売拠点、配送拠点、製造拠点)、販売ノウハウ、販売チャネル、ブランド認知、などですかね。
Competitor
最期に確認するのが競合です。競合他社は何社いて、市場のシェアをどの程度捕っていて、成長しているのは特にどの企業で、そうした企業は何をしているのか。
また、価格や提供形態などはどうなっているのか、こうした情報を参考にして、これらの競合に負けない体制を敷くことが新規市場参入時には求められます。
これらの質問、検討ポイントについて確認をしていくことで、顧客の状況や競合の状況からどの顧客セグメントを狙うべきで、どういった製品が望ましいのか、どういった施策が望ましいのか、といった内容に関する示唆が得られるでしょう。
出来れば、自社のAssetを最大限有効活用するような施策を考案できると現実的かつ効果的な施策になるのではないかと思います。
施策例
本当なら、一般的なものではなく、独創的なものを考えていきたいものですが、何も思いつかないで終わるよりは一般的なものでもこんな施策がいいと思います、という内容を伝えられたほうがいいので、ここでは新規市場参入を行うことが決まったときにどんな施策を取っていくか、という一般例を示します。
あくまで一般例ですので、加点を狙うのであればケース問題ごとの特徴を踏まえたオリジナリティあふれる案を出すことが望ましい点は、ご承知おきください。
さて、一般的な施策例ですが、以下のような切り口があるかと考えます。
付加価値訴求
付加価値訴求は、製品が定まっているときに有効かと思います。従来の製品にはなかった、付加価値を提供することが出来れば、強力な差別化要素となるので、それを施策として推進していくことは非常に説得力があります。
たとえば、今までは製品だけを販売していたが、今後は保守サービスもやる、コンサルティングサービスもやる、メールマガジンや動画配信を通じて顧客にとって有益な情報を提供する、などがあるかと思います。
ターゲット広告
ターゲット広告はかなり一般的な内容ですが、施策に至るまでの面談の中の会話できちんと顧客がどんな人達で、何を求める人達なのかを理解できていれば、より具体的な施策が考案出来ると思います。
ターゲット層が好んで訪れる場所に広告を仕込んでおくとか、ターゲット層が興味を持つであろう製品やサービス、イベントなどとのコラボレーションをして認知度合いを高める、そしてギフト券の提供などのキャンペーンも併せて実施することで新規顧客を取り込む、などがありますね。
パートナーシップ
パートナーシップは、比較的独創性が働きやすい観点ではないかと思います。自社が提供する製品、サービスが何で、そして顧客が求めているものが何かを把握していれば、あとは「こんな機能があったらいいな」と考えていくことで、その足りない機能を補完してくれるパートナーが見つかれば、かなり面白い施策を提案できるのではないでしょうか。
バリューチェーン拡大
最後にバリューチェーンの拡大です。新規に市場参入する市場において、既存のビジネスをうまく活用することで、川上、あるいは川下を抑えることでコストリダクションを図る、といった案は検討の価値があるかもしれません。
トータルサービスを提供できるようになれば、利便性が差別化要素にもなりますし、顧客の囲い込みにもつながるかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
もちろん、ここで記述した内容は一般的なものになりますので、実際にケース面談に臨む際にはケース問題に合わせた質問をしていき、課題設定、仮説検証をしていくことが必須です。
ただ、視点の一つとして理解しておくと、実際のケース面談でも役立つ場面があるかと思います。参考になれば幸いです。