コンサルタントは、ことあるごとにフローを描きます。特に、業務フローをよく描くのではないかと思います。(戦略ファームの方はどうなのか知りませんが・・・)
業務フローは、既存のビジネスを把握するという意味でも、改善点を見つけるという意味でも非常に重要な意味を持ちます。
内部統制が浸透しているか、という点を評価する際には業務フローを作成して主幹事証券会社や監査人に提出することもありますし、そうした活動をコンサルタントがサポートすることもあります。
こうした業務フローですが、会社ごとに異なる部分がある、というのはもちろん理解できる一方で、会社が違ってもあまり変わらないものもあります。
会社ごとに違う業務があるのであれば、それは無駄であるか、差別化要素だといえますが、会社が違っても共通している業務フローを大まかにとらえておく、というのは、今後、コンサルタントとして多くの企業に対面するときに役立つと思います。
顧客がしたいと思っている業務や、要件について話す前に、こちら側としては基本の知識が整っていない状況ですと、顧客からは「そんなことも知らないのか」という目を向けられる可能性もありますので、それを回避するという意味もあります。
今後、幅広く企業の業務フローを作成してご紹介していきたいと思いますが、今回は入社に関連する業務フローをご紹介したいと思います。
Agenda
想定読者
- コンサルタントの方で、業務フローを描く立場にある方
- 人事関係の担当者の方で、業務フローを描く立場にある方
- 従業員の入社に関する社会保険業務について興味のある方
想定メリット
- 業務フローの実例を確認出来る(入社関連)
- 従業員の入社について実施するべき業務がわかる
- 入社に関連して実施しなくてはいけない社会保険業務がわかる
入社に関連するハイレベル業務フロー
業務フロー
過去に、業務フローの書き方についてはこちらで投稿をしていますので、ご興味がおありでしたらぜひ見ていっていただけたらと思います。
上記の投稿で記述している内容とはちょっと違いますが、今回の投稿でご紹介する業務フローで活用しているオブジェクトの凡例については以下のとおりとなります。
今回は、ハイレベルに業務の流れを知ろう、という点をテーマにしておりますので、使用している凡例は相応にシンプルにしています。
実際に業務フローを見て頂いたほうがどういうことを意味しているのかも分かりやすいと思いますので、さっそく業務フローを見て頂きましょう。
こちらのフローでは、会社から内定通知が内定者に出された後、内定者が必要書類を記入していくまでを記述しています。業務フローは、各業務を説明する業務詳細一覧とセットで作りますので、そちらについては後述します。
こちらのフローは、後続のフローに続いていきます。
こちらのフローは、内定者が必要書類に情報を記入し会社に対して返送するところから、社会保険労務士によって手続きがされた結果、各成果物(健康保険証など)を受け取るところまでを記述しています。
IDの必要性について
ご確認頂くとすぐにわかることですが、各業務には数字3つからなるID(1-1-1、など)を振っています。これは、後述する業務詳細一覧上でも同じIDを用いることで、フローと詳細一覧という別々のドキュメントを用いながらも、どの業務のことを話しているのかが誰からも明らかになるようにするために存在しています。
また、入社という業務そのものについても、IDを振ることで、管理性を上げています。(こちらは数字2つで、1-1)
業務詳細一覧
業務フローは、流れをつかむにはばっちりなのですが、具体的にどんな業務を執り行うのか、という詳細をつかみたいときには不向きとなります。
こうした背景から、業務フローはそれを補足するドキュメントとして、業務詳細一覧を作成します。
ここで、さきほどの業務フローに振っておいたID(業務ID)が生きてきます。
具体的に見て頂いたほうがわかりやすいので、さっそく業務詳細一覧をご確認頂きましょう。(画像が小さかったらすみません・・・)
業務詳細一覧は、業務フローに割り当てた業務ID、その業務の担当者、そしてその業務詳細をまとめたものとなっています。こちらの画像には備考の列もありますが、ここは私のコメントです。
こちらは、内定通知が出るところから、雇用契約書の締結をするところまでを記述しています。なお、TAというのは、Talent Acquisitionの略で、人事の中の採用チームのことを示しています。
こちらは、内定者に向けて必用書類の記入をお願いするところから、内定者が必要書類を返送するところまでを記述しています。
業務詳細一覧の1-1-4についてとりあげますと、ご覧のとおり入社者情報キットとして、内定者に送付する必要のある書類を羅列しています。
今回は、業務詳細一覧に埋め込む形式で書いてしまっていますが、あまりに数が多い場合は、業務詳細一覧からは抜き出して別のスプレッドシートにまとめておき、業務詳細一覧からは「送付対象書類についてはファイルXXXを参照」としておくこともあります。
こちらは、内定者から必要書類を受領して、社会保険関係の手続きを行い、内定者が入社後に健康保険証などを受領するまでのフローを示しています。
フロー自体は簡単だったかと思いますが、社会保険関係、住民税関係の届け出、手続きについてはあまりなじみのないものも多かったのではないでしょうか。
次のセクションでは、今回取り扱った社会保険や住民税の手続について、概要をご説明します。
入社に関連する社会保険・住民税手続き
社会保険関係や住民税関係のの手続は、普通の会社員であればあまり意識しないものです。膾炙から必要な書類があるといわれて提出しておけば、あとは会社側が社会保険労務士と協力して手続きを終えてくれます。
ただ、コンサルタントとして業務改善などをする場合は、概要については抑えておく必要があります。
ここでは、今回取り扱った入社関連の社会保険手続きについて、概要をご説明染ます。
健康保険資格取得届
健康保険は、企業に勤める従業員の方が傷病などを患ったときに保険給付を受けられるようにするためのものです。こちらの健康保険は、従業員の方が勤める企業ごと(適用事業所)に加入する必要があります。
したがって、転職した場合は退社する企業の健康保険からは抜けて、新たに入社する企業の健康保険に加入することとなります。
あるいは、学校を卒業して就職する場合は、それまではご両親などの健康保険の被扶養者として、ご両親などの健康保険に同様に加入していた状況から抜け、新たに就職する企業の健康保険に入りなおす事になります。
厚生年金保険被保険者資格取得届
厚生年金保険とは、国民年金に上乗せする形で給付される年金のことです。年員受領が開始したときに、国民年金の分と、厚生年金保険の分をあわせた支給がされることになります。
この厚生年金保険は、国民全員が対象ではなく、会社員が対象となります。
この厚生年金保険も、健康保険と同様に勤めている企業ごとに入るものになるので、転職や就職の際には厚生年金保険に入るための手続をすることとなります。
被扶養者異動届
被扶養者、というのは健康保険に関連するものです。
例えば、企業Aに勤めている会社員Aさんがいて、会社員Aさんには奥様Bさんがいるとします。奥様Bは企業に勤めていない場合、会社員Aさんの加入する健康保険に同様に加入しているものとして扱ってもらうことが出来ます。
これを、扶養といいます。ことばの意味としては生活の手助けをしている、というようなものになりますが、扶養している人を扶養者(会社員Aさん)、扶養されている人を被扶養者(会社員Bさん)と呼びます。
転職、就職したタイミングで、健康保険に入りなおす事になりますので、そのときに新たに入社する方に扶養している方がいる場合は、被扶養者異動届を行います。学校を卒業して入社するような方ですと、この手続きはしないケースが多いですね。
なお、こちらは入社時の届出として説明しておりますが、年度の途中などで扶養者に変更があった場合にも同じ名前の被扶養者異動届を行うことになります。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険とは、国民が失業したときなどに国から失業給付をもらったり、あるいは就職に向けて資格取得などの補助を受けるための教育訓練給付金の原資になっているものです。
この雇用保険は、企業としては従業員全員に加入してもらう必要のある強制保険制度となります。
転職、就職したタイミングで勤める企業が決まると、雇用保険に加入するための手続として、こちらの届出を出すこととなります。
特別徴収に係る給与所得者異動届出書
特別徴収とは、住民税に関連するものです。
住民税とは、国民が住居を構える市区町村等に対して支払う税金のことで、支払方法には普通徴収と特別徴収の2つがあります。
普通徴収とは、年に4回、国民宛に市区町村が直接送付する納税通知書に従って納税をする方法で、これに対して特別徴収というものは、企業が毎月従業員に対して支払う給与から天引きをして代わりに支払うという方法です。
普通徴収になっていると、年に4回、結構大きな金額を請求されることになるので、特別徴収のほうが支払えなくなってしまうというリスクがない分、安全かつ簡便なので、ほとんどの会社員さんは特別徴収を選択しています。
この特別徴収を行う場合、転職のタイミングで前職の職場から、今後勤める職場に特別徴収を引き継いでもらうことになります。したがって、こちらの届出をすることで、特別徴収が引き継げるようにしてもらいます。
転職のタイミングによってはうまく引継ぎが出来ないケースもあるので、特別徴収から普通徴収に一時的になり、その後特別徴収に切り替えるというケースもあります。
ちなみに、この住民税ですが、支払うことになる金額は年間の所得に依存します。したがって、社会人一年目の方は入社した手で年間の所得が確定していない状況になるので、住民税の支払いがありません。よって、この特別徴収も実際には社会人2年目から適用していくこととなります。
終わりに
いかがでしたでしょうか。入社関連の業務フロー、見てみると当たり前じゃーん、って感じですよね。ただ、いざ作ってみろと言われると簡単には思いつかないのではないでしょうか。
今回取り上げたフローはかなりハイレベルですが、それがゆえにどこの企業でも大体同じ流れを適用していると思いますので、ご参考になったのではないかと思います。
このほかにも、様々な業務フロー、どしどし書いていきたいと思っています。