はい、今回はSAPの承認に関する設定、Release Procedureの設定方法を解説していきます。ちなみに承認と言えばApprovalというイメージがありますが、購買活動においてはRelease と言います。
モジュールでいえばMM、プロセスでいえば購買に関連しますが、企業が購買を行う際、何かを買いたいと思ったら第三者による承認もなく変えてしまうケースというのはほぼ存在しません。
不要なものを購入してしまうことは無駄な費用になりますし、株主への説明もできなくなってしまいますからね。
と、いうわけで購買活動を行う際には承認が必要になります。
今回は、この承認に関わる設定をどのように実施するのか、Step By Stepでご紹介したいと思います。
Agenda
想定読者
- SAPを触り始めた人で、購買プロセスを実行してみたい人
- SAP MMモジュール領域のコンサルタントの方で、承認の設定を組まないといけない人
- 社内の購買管理にSAPを使用されている企業の購買領域のご担当者で、承認の設定を行う必要のある人
メリット
- SAPの購買における承認設定のコンセプト、設定できる単位、レベル、粒度がわかる
- SAPの購買における承認設定の方法がステップバイステップで分かる
承認設定ができる単位、レベル、粒度
まず、SAPの購買に対する承認設定ができる単位、レベル、粒度について解説します。
SAPでは、最終的にRelease Strategyと呼ばれる承認設定を複数組むことができるのですが、これは購買伝票、Purchase Orderに対して一つ、割り当てがされます。
Purchase Orderが作成されたときにどのRelease Strategyを割り当てるべきなのか、ということをシステムが自動的に判断するのですが、このとき、何を目印にしてRelease Strategyが割り当てられるのかというと、Purchase Orderの、特にHeader上にある項目が使用されます。
なぜHeaderなのか、といういと、それはPurchase Order一つに対して一つのRelease Strategyを割り当てるというのがSAPのコンセプトであり、Itemごとに異なるRelease Strategyを割り当てる必要性を検討に入れていないからです。
よくあるものとしては、以下のようなものがあります。
- Document Type:伝票タイプ
- Purchase Org.:購買組織
- Purchase Gr.:購買グループ
- Total Net Order Value:合計金額
細かくは企業に依存しますが、これらの意味合いとしては、伝票タイプは用途別に設定されますし、購買組織、購買グループは購買される対象をカテゴリーに分けたものと読み取ることもできますので、用途別、責任部署別、購入対象カテゴリー別、そして金額別に承認の設定を組むことが出来ます。
承認については、多段階の承認プロセス(最大で7)を組むことが出来ますので、金額によっては最終的にCEOの承認も必要、といったプロセスも組むことが出来ます。(やるかは別として)
承認設定でやるべきこと、触るべきConfig
では次に、承認設定、Release Strategyを組むまでに設定するべき事項についてご紹介します。以下、イメージ図をご覧ください。
上段でRelease Procedureと言っているのが、承認の設定のことを意味しています。このRelease Strategyは、5つの要素で出来上がっており、それら5つの要素の設定が必要となります。
これらの5要素の加えて、Classification, Characteristicsというマスタを関連付けて作成し、Classificationを要素としてのRelease Strategyに割り当てる、という作業が必要となります。
結構触るものが多いような印象を持たれましたでしょうか。実際にステップバイステップで実施してみると簡単ですので、ぜひ次のセクションをご確認ください。
承認設定(ステップバイステップ解説)
Classification、Characteristicから始める
まず最初は、Classification、およびCharacteristicsから始めることをおススメします。
具体的には、Characteristicとして作ったものが、Release StrategyをPurhcase Orderに割り当てるときの識別条件となるからです。
今回は、例として、以下の条件で設定を行います。
- 識別に使用するのは、以下の3つ
- Document Type
- Purchase Org.
- Total Net Order Value
- Total Net Order Valueの金額は閾値として使用する
- 一定上の金額を持つPurchase Orderは2段階の承認が必要とする
Characteristicを作成:CT04
まず先に、Characteristicを作成します。Characteristicを作成した後で、Classificationを作成し、それに割り当てを行うという方法をとりたいからです。
まずは、識別に使用する項目の一つ目、Document Typeを指定するためのCharacteristicを作ります。Tr-Code:CT04から、Characteristicを作成する画面へ移動し、名前を入力し、新規作成のボタンを押します。
Document typeは閾値を持ったりしないので、Single-Valueを選択しておきます。
Additional Dataのタブに移ると、参照するべきテーブル、フィールド名を入力することが出来ます。ここで、テーブル名にCEKKO、フィールドにBSARTと入れておくと、承認に使用することとなるDocument typeが参照されます。
これをすると、Characteristicの名称や、データタイプ、などが参照している項目に合わせたものに自動で更新されます。いちいち何桁で、データタイプが何で、等を入れるのが面倒な方は有効活用しましょう。
続いて、Valueタブに移ります。ここで、Document typeを具体的に指定します。今回は、標準のDocument type:NBが使用された場合の承認設定を組みたいので、NBを値として、そしてDescriptionにStandard POと入力しました。
そして最後に、これはやってもやらなくてもいいのですが、Restrictionsタブに移り、Class Type:032を指定します。こうすると、このCharacteristicはRelease Strategy用のClassification以外には割り当てることが出来なくなります。
さて、次のCharacteristicです。今度は、Total Net Order Valueに相当する物を作ります。閾値として項目などは、設定によっては複数の値を持っておく必要があります。今回は、2つの値を用いるので、Multiple-Valueにチェックを入れています。
テーブル名、フィールド名はそれぞれCEKKO、GNETWを入れておくと、データタイプ、桁数などを自動で引っ張ることが出来ます。
Valuesタブに移りましたら、金額情報を入れます。ここに入れている情報を識別条件に使います。
この後、10万ドル未満なら第一段階承認、それ以上なら第二段階承認をするようにRelease Strategyを組むので、それに合うように第一段階と第二段階の識別に使用する条件を入力しています。
最後のCharacteristicです。次は、Purchase Org.を指定するためのものなので、テーブルはCEKKO、フィールドはEKORGと入力します。
Valuesタブに移り、Purchase Org.の値を入力します。
これで、Characteristicは出来ました。次は、Classificationを作成し、Characteristicを割り当てる作業です。
Classificationを作成(CL02)
Tr-Code:CL02で、Class名を入力し、新規作成ボタンを押すことでClassificationの作成ができます。
Characteristicのタブに移ったら、これまでに作成したCharacteristicを入力しましょう。これで、Classification, Characteristicの作成は終わりです。
Release Procedureの設定を行う
さて、ここからはConfig、カスタマイズです。
SPRO⇒Material Management⇒Purchasing⇒Purchase Order以降に、以下のようなノードがあります。
ここから、Release Procedureの5つの要素について設定をしていきます。
Release Groupを設定する
Release Groupは、承認設定をまとめて管理するためのものです。これに対して、さきほど作成したClassificationをあらかじめ割り当てておくことで、あとになって設定するRelease Strategyでは、割り当てられたClassificationに紐づくCharacteristicを活用することが可能となります。
設定自体はすごく簡単ですね。今回は、Document TypeがNBのPurchase Orderを対象にする承認の設定、という意味で、Release Groupの名称は同じくNBにしておきました。
Release Codeを設定する
Release Codeは、誰が何の権限をもって承認をするのか、という意味だととらえましょう。今回は、2段階の承認が必要になるケースもあるので、担当者承認とマネージャー承認の2つのコードを組んでおきます。
Release Indicatorを設定する
Release Indicatorは、承認の状況を示すものです。承認前なのか、承認後なのか、を定義しておけばとりあえずOKです。
承認後の状況を示すRelase Indicatorについては、Released のチェックマークをチェックしておきましょう。
細かな設定としては、承認後の状況になったら変更できないようにする、等の設定もここから可能になります。
Release Strategyを設定する
さて、これまでに作ってきた設定をRelease Strategyにまとめます。
Release Strategyは、Release GroupとRelease Code、そしてClassificationを関連透けるためのオブジェクトです。
まずはRelease Groupを指定し、名前を入力します。そして、使用するRelease Codeを割り当てます。
Release Prerequisiteは、承認の段階を管理するためのもので、前段階の承認が未完了であれば次の承認者は承認をできないようにする、といった制御を行いたい場合に使用します。(ほとんどそうだと思うのですが・・・)
Release Prerequisitesのボタンを押下して、R2というRelease Code(Managerの承認)が始まる前にR1(担当者の承認)が終わっていないとだめ、という条件をここでは指定しています。
Release Statuuesesのボタンを押すと、Release Codeごとの状況に応じて、適用すべきRelease Indicatorを指定することが出来ます。ここでは、誰かの承認が終われば全体として承認としていいのか、それとも承認者全員の承認が終わらないと全体として承認されたことにならないのか、といったことを決めることが出来ます。
Classificationのボタンを押下すると、どのClassificationを割り当てるのか、せってすることが出来ます。ここでは、さきほど作成しておいたClassificationを割り当て、さらにCharacteristicについても入力します。
Workflowを設定する
最後です。Workflowを設定します。ユーザーIDを指定することで、具体的に誰が各承認ステップを実施するのか、指定します。
Release Group, Release Codeを指定し、それぞれに誰が承認を行うのか、指定を行っています。
USはUser を意味し、Agent IDにはUser IDを入力することになります。なお、例では*と入れていますが、これでは動かないので、きちんとUser IDを入力してくださいね。
以上で、Release Procedureの設定は完了です。
おわりに
いかがでしたでしょうか。説明を見てみると長ったらしく感じるかもしれませんが、設定自体はやってみると結構簡単です。
ご参考になれば、幸いです。