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【ざっくり解説】SAP IBPとは、サプライチェーン計画ツールとしての特徴

皆さん、こんにちわ。突然ですが、SAP IBPというソリューションをご存じでしょうか。

SAP IBPは、SAP社が提供するサプライチェーン計画のソリューション、ツールです。

SAPは以前よりSAP SCMというソリューションを提供しており、その中にAPO:Advanced Planner and Optimizerというモジュールがあるのですが、SAPのサプライチェーン計画といえばこのAPOが対応していました。

SAP IBPは、このAPOの後継に相当するソリューションであり、ツールであるのですが、実態としては単純な機能のアップデートではなく、UIも全く違うものとなっています。

このSAP IBP、比較的新しいソリューションであり、日本企業への導入事例はなかなか少ない状況ではあるのですが、運よく導入に関わる機会がありましたので、そこで学んだSAP IBPの機能概要を解説していきたいと思います。 まずはSAP IBPの特徴からご紹介していきます。

まだまだ日本では導入事例が少なく、SAP IBPの知見を持つ方も少ない状況ですが、SAP社としても日本企業への導入には注力している様子ですので、もしSAP IBPの導入を検討されている、あるいは機能の概要だけでも調査したい、という方がいらっしゃいましたら本投稿が参考になれば幸いです。

想定読者

  • SAP社の提供するSAP IBPの導入を検討されている事業会社のご担当者
  • SAP IBPの導入PJに関与することになった事業会社のご担当者
  • SAP IBPの導入担当となったSIer, コンサルティングファームの方
  • 他ソリューションとの比較検討のためSAP IBPの機能を調査したい方

SAP IBPと

SAP社の提供するサプライチェーン計画ソリューション

まず、SAP IBPとは何なのか?というところからお話をしていきます。SAP IBPは、一言でいえばサプライチェーンの計画ツールです。SAP IBPではサプライチェーンにおける、購買、生産、在庫配置、そして顧客への納品までを計画することが可能です。

SAP IBPの特徴

サプライチェーンの計画ツールは多くの企業が提供していますが、SAP IBPにはいくつかの特徴的な機能があり、それによって市場で独自の計画策定ツールとして認識されています。3つ、主な特徴をご紹介します。

数量と収益、双方の計画をリアルタイムで連携

サプライチェーンの計画策定というと、購買数量、生産数量、在庫配置の数量、販売数量、といった数量の計画が当然必要となります。一方で、計画の出発点である予算は売上やコストといった金額である、という具合に部門や議論の行われるレベルの違いによって計画が数量ベースだったり、金額ベースだったりする、という違いが発生することがあります。

こういう状況だと、計画の全容がつかみにくい、という状況に陥るのもありますが、それ以上に会社全体にとって最適な意思決定を何に基づいて実施したらいいのかがわからなくなってしまいます。

例えば、顧客への納品が遅れないこと、Service Levelを高く保つことを最優先に考えるのであれば数量ベースの計画を詳細にみていく必要がありますし、売り上げの達成やコストの削減を第一に考えるのであれば、金額ベースの計画を詳細にみていく必要があります。

しかしながら、数量ベースで計画を確認し、修正したら金額面への影響がありますし、金額ベースの計画を見て修正を加えるとこれまた当然ながら数量面への影響があります。

したがって、これら2つの側面はバランスよく確認していく必要があるのですが、市場にあふれる多くの計画ツールでは、数量ベースの計画を支援するツール、あるいは金額ベースでの計画を支援するツール、といったどちらか一方を支援する形式のものが多く、両方をバランスよく考慮して計画をするということがなかなか難しい、という点が課題でした。

例えば、Excelは非常に柔軟性にあふれた計画ツールで、多くの企業が計画作成の際に使用しています。とある理由で生産数量を増やさなくてはいけない状況になり、計画を修正したとしましょう。生産数量を増やすとなると、生産に使用する構成品や原材料などの購入が必要になり、またそれらの輸送の費用が発生します。さらに、突発的に生産数量を増やすことに対する対応として人件費なども追加的に発生します。

このような、生産数量の修正が行われることに起因する金額面の影響をすべて整理するのは、不可能ではないですが相当の労力が発生します。しかし多くの時間をかけて計画修正の影響について調べている間に事業環境はどんどん変化してしまいますので、計画作業の現場ではエイヤで計画修正が実行されてしまう、ということになるわけです。

SAP IBPはこうした課題への対処として、数量ベース、金額ベース、両方の計画をリアルタイムで連携させ、どこか一つの項目でも計画が修正された場合には関係するすべての数量、金額をアップデートします。

したがって、計画作業にかかわるユーザーの皆様は計画の修正を加えることになったとして、その計画修正の影響は数量面、金額面双方で瞬時に把握することが出来ます。

数量と金額がリアルタイムで連携することにより、計画の確定、あるいは修正時において数量と金額の両方が意思決定の基準として提示されるため、総合的に最適な意思決定が可能となります。

また、数量と金額がリアルタイムで連携するため、計画の作成や修正という作業そのものがより簡素化され、いわばTry&Errorのように計画案を複数検討し、どの計画が最も事業環境的には望ましいのか、という探索的アプローチも可能となるという効果も期待できます。

複数部門にまたがる計画策定を一元化、合意形成をサポート

サプライチェーンの計画策定というと、購買、生産、在庫配置、販売といった複数の計画が作成の対象であり、それぞれの計画がお互いに整合している必要があります。

これらの計画は作成に責任を負う部門が異なり、部門でいえば購買・調達部門、生産部門、物流部門・SCM部門、営業部門、そして予算管理を行う財務部門や経営管理部門などが登場人物となります。

先ほどのセクションでは数量が修正されると金額にも影響が及ぶという話をしましたが、同様に、とある部門の計画が修正されると別の部門の計画にも影響が出てしまいます。

したがって、とある部門が計画を作成あるいは修正したら、その計画に関係する部門のリーダーを集めて会議を行い、この計画で進めて良さそうか、実現可能性はあるのか、という点を議論する、という計画のすり合わせ業務が発生します。

このすり合わせ業務ですが、非常に多くの工数を要することが一般的です。

例えば、生産部門が生産計画を作成したとします。生産計画は購買部門・調達部門に伝達され、購買部門は購買計画を作成しますが、ここで生産部門が作ってくれた生産計画の中では考慮されていない購買のリードタイムなどの制約条件を意識して計画を作成することになります。

その後、購買計画が作成されたら、物流部門に伝達され、在庫配置のための輸送計画などが作成されますが、ここで物流部門は購買計画の中では考慮されていなかった輸送のリードタイム、各拠点の安全在庫数量などを意識してまた計画を作っていきます。

一通りの計画が作成されたら、ここからようやくすり合わせが始まることになるのですが、ここまでの購買計画、物流計画の作成の間に生産部門が生産計画をやっぱり別の計画にしたい、という風にそもそもの出発点である計画を修正してしまう、このようなことも多々発生します。

こうした事象が発生する原因は何かというと、本来はお互いに作用しあう関係にある各部門間の計画作成業務が分断されていること、そして情報の共有がスムーズではないことにあります。

SAP IBPは、生産、購買、物流、そして販売計画をすべてリアルタイムで連携させるため、事前に各部門の制約条件さえ定義しておけばこれらの計画が一元的に作成されます。

また、作成された計画はSAP IBPを通じて関係者に瞬時に共有されるため、計画の作成または修正案がある場合、関係者は瞬時にそれらを確認することが出来ます。あとは自分たちの部門が責任を持つKPIなどに関係する部分を見て部門間で微調整を図っていけばいい、ということになります。

この微調整をかける際も、すでに述べている通り調整の影響がどう全体の計画に影響するのかは瞬時にSAP IBPが計算をしてくれます。

こうすることで、各部門間の計画のすり合わせ業務は非常に簡素化され、合意形成が容易になるのです。

自動の数値集計によってより重要な業務に集中可能

計画作成というと、まず過去の実績情報を集計して確認し、それから今後の計画を作成するという進め方をすることが一般的です。

販売計画を作成するときなどは、製品のSKUレベルで過去の実績を確認し、今後の販売計画を作成するということもあるでしょうが、製品ファミリーといったグループで売れ行きを確認してみて傾向をつかんでみたい、ということもあるでしょう。

あるいは、特定の顧客グループ、もしくは特定の地域での販売数量がどうだったか、という複数の軸で分析してみたいということもあるはずです。

こうした情報の集計作業というのはそれ自体が価値を生んでいるわけではないにもかかわらず、計画策定業務の中では非常に大きな割合を占めていて、結果として戦略的な意思決定のための議論に割り当てられる時間が少なくなってしまう、という事象が発生しています。

SAP IBPは、このような実績情報の集計を自動化します。確認したい分析軸を選べばその通りに集計結果を表示するので、各分析軸での傾向なども簡単につかむことが出来ます。

実績だけでなく、計画についても作成してみた結果、地域別にまとめるとどうなのか、顧客グループ別にまとめるとどうなのか、製品を製品グループあるいは事業部別にまとめてみるとどうなのか、という確認をしてみたい時もあるでしょう。

そうしたときも、SAP IBPは迅速に集計結果を提供してくれますので、集計作業そのものに割り当てる時間は少なくなり、より大事な戦略的な議論や意思決定に時間をかけることが出来ます。

終わりに

いかがでしたでしょうか。SAP IBPがどんなソリューション、ツールなのか、イメージがわきましたでしょうか。 今回はSAP IBPの主な特徴に絞って解説をさせて頂きましたが、今後はUIや機能の使い方、より細かな機能なども解説していきたいと思いますので、ぜひ興味のある方はご確認頂けますと幸いです。

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