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【ざっくり解説】SAP Signavioのモジュール概要、業務プロセス管理(BPM)の必要性

皆さん、こんにちわ。最近、SAP社がSAP Signavioというツールを押し出しているのをご存じでしょうか。

2022年のSAP Sapphire TokyoでもこちらのSAP Signavioは紹介されており、こちらの記事では「現状のビジネスプロセスを可視化し、ボトルネックを洗い出して改善や簡素化を図るビジネスプロセスマイニングツール」であると説明がされています。

しかしながら、実際にはSAP Signavioは単なるプロセスマイニングツールではなく、業務プロセス管理(BPM :Buisness Process Management)の全体をサポートし、企業の変革の手助けを行うものです。このあたりが正しくメッセージとして伝えられていない気がして非常に残念でなりません。

コンサルティングファームで長らく働いている身としては、業務プロセス管理が出来ていないお客様が非常に多いという実態はよく知っており、この点でSAP Signavioは多くの企業にすでに入り込んでいるSAP社が提供しているということもあり、業務プロセス管理という活動を企業に根付かせることが出来るのではないか、と個人的にも大きな期待感を抱いています。

本投稿では、業務プロセス管理の必要性と合わせてSAP Signavioとはいったいどんなものなのか、ご紹介していきたいと思います。一部SAP社のメッセージに、私独自の見解も加えています。

本投稿ではまず、SAP Signavioが登場する背景として、業務プロセス管理の必要性についてご紹介していきます。

SAP Signavioは業務プロセス管理のソリューションであり、SAP導入プロジェクトの中でも活用できるツールという立ち位置になりますので、これから業務プロセス管理に取り組もうとされている事業会社の方や、業務プロセス管理のプロジェクトに関与されるかもしれないコンサルタントの方にとっては、知っておいて損はない情報になっているかと思います。

ぜひ、お付き合い頂けますと幸いです。

想定読者

  • 業務プロセス管理とは何か、その必要性について知りたい方
  • 業務プロセス管理に関する日本企業の実態について知りたい方
  • SAP Signavioが業務プロセス管理に貢献する

Agenda

SAP Signavioは業務プロセス管理のソリューション

まず、SAP Signavioとは何なのか、という質問について回答をしますと、「SAP Signavioは業務プロセス管理を行うソリューション群」となります。

形態としてはクラウドで提供されており、モジュールによって異なるもののユーザーライセンス形式、あるいはデータボリュームに応じて課金がされる方式であり、業務部門のユーザーの皆様が業務を可視化、分析可能な状況にし、改善していく際に使用していくというイメージとなります。

モジュールは以下の通りです。簡単に概要説明を行っていきます。

  • Process Manager
  • Process Governance
  • Process Collaboration Hub
  • Process Automation (実際にはBTPのサービス)
  • Process Insights
  • Process Intelligence
  • Journey Modeler

Process Manager

Process Managerは、業務プロセスを作成する、プロセスモデリングツール、という位置づけになります。

SAP社が提供しているということもあり、SAP社の提供するSAP Best PracticeをProcess ManagerにImportし、それを参考にしながら業務プロセスを書いていく、ということが出来ます。

もちろん、SAP製品を使って行っている業務の範囲外、例えばCRMや需要予測、研究開発などの領域の業務プロセスを書いてはいけない、というものではありません。

これらの領域にはSAP Best Practiceが十分には対応していませんが、こうした領域についても業務プロセスを書く際にも、もちろん使用できます。

業務プロセスを階層型で管理することが出来る仕様になっていて、経営層が見るレベルのValue Chainから、事業部長クラスが見るプロセス、それを現場の作業レベルに落としたサブプロセスレベル、という階層で詳細度を管理していくことが出来ます。

また、好き勝手に業務プロセスを書くとはちゃめちゃな業務プロセスが出来上がってしまうので、BPMN2.0 (Business Process Model and Notation 2.0)という規格に従って記述が行われているかどうかをチェックし、日t契合の場合はアラートをあげるということを可能としています。

更には、プロセスに対してコスト、人的リソースの状況を設定し、それを変更することでどこにボトルネックがあるか、日ごろのコストはどれくらいになるか、という点をシミュレートすることが出来ます。

Process Governance

Process Governanceでは、Process Managerで作成した業務プロセスに対して承認・非承認の管理が出来ます。

それだけ?と思うかもしれませんが、業務プロセスの管理をPPT、Excel等で実施している場合、それらのファイルの最新版を承認の責任者に対して送り付け、「いつまでに承認をお願いします!」とお願いしていたとしても、責任者側で承認の必要性を認識できていなく、承認がされない、または承認すべきドキュメントの最新版が今どこになるのかわからない、という状況は多々発生します。

そこで、こうした煩雑になりがちな状況もシステム化したものがProcess Governanceです。これにアクセスすると承認の責任者はどれを承認すればいいのか一覧で確認でき、また最新の業務プロセスにアクセスが出来ます。

Process Collaboration Hub

Process Governanceで業務プロセスが承認されると、承認された業務プロセスが閲覧権限を持ったユーザーに展開されます。閲覧権限を持った人がアクセスできるのがProcess Collaboration Hubであり、ここで承認されたすべての業務プロセスが確認できます。

また、Process Collaboration Hubはただ見るだけではなく、意見交換を行うための場としても機能し、業務プロセス上のタスクに対して「もっとここをこうしたい」、「この業務は実際にはこうなっている」などのコメントをつけることが出来ます。

従来まではこうした意見交換はFace to Faceの打ち合わせで認識を合わせながら実施されていましたが、SAP Signavioによってこうした議論がオフラインで実施できるというわけです。

従来使用されてきたPPTやExcelでも業務プロセスを見ることはできますので、オフラインでコメントをつけて担当者に共有する、ということは不可能ではありませんが、ファイルを複数開いてみながら、コメントを書き込むときはまた別のExcelファイルに書き込み、そしてそれをメール等で送る、という手間がかかっていました。

しかしながら、SaaS型のツールを活用することで見たい業務プロセスにすぐに飛ぶことが出来、コメントもそのまま対象の業務プロセス上につけられるという点で、今まで以上に議論を活性化する効果が見込めます。

Process Automation (実際にはBTPのサービス)

Process Managerでは業務プロセスを記述するのですが、そのなかで「ここからここまでの業務はRPAやワークフローを活用して自動化したい」という要望が上がったとき、対処するのはProcess Automation です。

ちょっと注意が必要なのですが、このProcess Automation、SAP Signavioのモジュールという書き方で図解もされていますが、従来から存在していたSAP社のサービスである、BTP(Business Transformation Platform)で提供されているintelligent RPA, Workflowの活用を指しています。

SAP社としては、以前から存在していたこのBTPというサービスもSAP Signavioで実施する業務プロセス管理の要素の一つである、という位置づけにしたということですね。

intelligent RPAはiRPAとも略され、文字通りRPAのサービスです。SAP社のERPを活用した業務の自動化については、事前定義済みのソリューションが存在しており、例えば「取引先からメールに添付された状態で受け取ったPDFを、指定の宛先に転送するとPDFの内容を読み取り、会計伝票に登録し、消し込みまで実施する」という自動化がものの数分で構築できます。

Workflowは、SAP製品をご存じの方であればよく知っているかと思いますが、業務の流れが途切れないように承認やレビューなどの作業を確実に担当者に促すことを目的とします。

Process Insights

Process Insightsは、SAP ECCまたはS/4 HANAから主要なPPI (Process Performance Indicator)を取得し、業務プロセスに沿って表示するというものです。

Purchase Orderの作成がどれだけ自動化されているか、納期を超過しているPurchase Orderが今どれくらいあるのか、といった指標がLead to Cash、Source to Payといった業務プロセスごとに定義されており、これを見ることでどれだけ効率よくERPが利用されているのか、業務が実行されているのかの外観をつかむことが出来ます。

更にすごいのは、自社以外のProcess Insightsの利用者のデータをベンチマークとしてみることが出来ます。他社はどれだけ自動化しているのか、という点が確認できるので、これと比較すると自社の状況は良いのか悪いのか、はっきりさせることが出来ます。

また、伝票タイプの使用状況がどうなっているのか、つまり利用されていないものが無いか、といった業務プロセスの観点からは少し外れますが、ERPの活用実態を確認できる情報も閲覧できます。

Process Intelligence

Process Intelligenceはプロセスマイニングの技術を使った業務の可視化のツールです。こちらのモジュールはSAP製品だけを対象にはしておらず、SQL文等でシステムログを取得し、それを読み込ませることが出来ればその内容をもとに業務プロセスを可視化、そしてボトルネックや業務パターンの解析をしてくれます。

Process InsightsはSAP製品に対する指標に基づいた分析を可能としましたが、Process IntelligenceはSAP製品以外も対象にできる、という点と、さらにタスクレベルまで踏み込んだ詳細な分析が出来るということになります。

Journey Modeler

Journey Modelerは、顧客体験や従業員体験といった一連のJourneyをモデル化し、そうしたJourneyの改善のためには自社の業務プロセスをどのように改善すべきかを検討するツールとなります。

例えば、自社の業務プロセスの範囲外であるカスタマージャーニーをモデルとして図解し、「カスタマーはこういう点を不満に思っている、だから自社の業務プロセスのここを改善しよう」というように、最終的には自社の業務プロセスで改善できる領域・改善すべき箇所がないかを特定する活動につなげる際に利用します。

なぜ今、業務プロセス管理なのか

そもそもの話として、なぜ業務プロセス管理にツールを活用してまで取り組む必要があるのか、という点についてご紹介します。

変化の時代に必要とされるTransformation Capability

皆様ご存じの通り、現代はVUCAの時代とされており、これまでに事例のなかったような大きな変革がこれまで以上のスピードをもって押し寄せ、市場環境は大きく変化していきます。

こうした環境下で、これまでの姿ややり方にとらわれ、現状維持に甘んじる企業は取り残され、競合他社に追い抜かれていきます。

VUCAの時代では、必死に変化し続ける企業だけが生き残ることを許されるのです。

それでは、企業が変化し続けるには、何が必要でしょうか。カリスマ経営者による強力なリーダーシップのもと、全社一丸となってビジネスモデルの変革などに取り組むことでしょうか。

答えはNoです。

なぜなら、経営者の強力なリーダーシップに依存した変革活動は一過性のものとして終わってしまい、一時的には業績が上向き市場から評価を得ることはあっても長くは続かず、経営者の交代などによってすぐにまた元の状態に戻ってしまうというアップダウンの繰り返しに終わる可能性があるからです。

変化の時代に求められるのは、企業としてTransformation Capabilityを持つことです。

ここでポイントとなるのは、特定の経営者などに頼らず、現場が起点となって課題を特定し、対処方法を検討し、自己変革を進めていくことが出来るような自走型の課題解決能力を身に着けることです。

市場ニーズの変化に合わせて業務プロセスをTransformationすることが重要

現場が起点となってTransformationを進めていく必要性はわかりましたが、何を変えていく必要があるのでしょうか。

ここで注目されるのが、業務プロセスの変革であり、業務プロセス管理なのです。

そもそも業務プロセスとは何なのか

ここで、業務プロセス管理の対象である業務プロセスとは何なのか、という点に立ち返ります。

業務プロセスとは、企業が持つ業務の集合体であり、多くの組織の従業員の仕事がつながることで価値を増大させつつ、顧客に対する価値を提供するという役割を持ちます。

製造業を例にとると、購買部門が原材料を購入し、その原材料をもとに生産部門が製造を行い、物流部門が適切に在庫を管理したのち、受注に対して在庫引き当てが行われ、最終顧客のもとに製品が欲しい時に欲しい数量だけ届きます。

業務プロセスとは、このような形で正しく構築されることによって顧客に対して価値を提供する仕組みであると言い換えることが出来ます。

業務プロセス=顧客に価値を提供する仕組み

そんななか、現代においては顧客のニーズの変化が激しくなっています。であれば当然ながら、顧客のニーズの変化に応じる形で、変化したニーズに対して適切に価値を提供できるように、仕組みである業務プロセスも変化していく必要があります。

これが、業務プロセスの変革が必要である理由なのですが、顧客のニーズの変化を迅速に感じ取り、対応をとることが出来るのは他でもない現場の従業員の方々です。 したがって、現場起点で業務プロセスを変革するTransformation Capabilityが求められているのです。

業務プロセスの変革を行うTransformationのフェーズ

業務プロセスのTransformationは、以下のフェーズに分割されます。

  • 課題の把握
  • 課題の構造・原因の理解
  • 解決策の立案
  • 実装・運営
  • 評価・修正

業務プロセス管理が出来ていないと業務プロセスのTransformationは頓挫する

業務プロセスのTransformationのフェーズは先ほど触れたとおりですが、こうした活動を進めていく際には一つ、大事な前提事項があります。

それは、業務プロセスが十分に管理されていることです。

例えば、課題の把握のステップは、まずは現状の業務プロセスを把握し、将来において課題となるのはどこなのかを理解するという活動を指しますが、課題を発見するにはそもそも自社の業務プロセスがどうなっているのかが事前に管理されていることが前提となります。

自社の業務の流れや、全体像が理解できない状況でいると、どこに課題が潜んでいるのか、どこを変えたらいいのか、あたりをつけることもできませんし、またいくつか課題が発見されても優先順位をつけることも難航してしまいます。

また、課題が見つけられたら、その課題に対して対症療法的なアプローチをとるのではなく、根本的案原因にアプローチする必要があり、これが課題の構造・原因の理解のステップを意味しますが、業務プロセスがきちんと管理されていなければ、こうした分析は難航し、非常に時間がかかってしまうことは想像に難くないと思います。

したがって、企業が変化の時代において環境変化に取り残されず、持続的に成長を遂げていくために必要なTransformation Capabilityは、業務プロセス管理が十分に行われていることが前提なのです。

業務プロセス管理(BPM)で取り組む内容

ここで、業務プロセス管理という言葉について触れたいと思います。

業務プロセス管理とは、英語ではBusiness Process Management(BPM)となり、言葉の通り業務プロセスを管理する活動を指すのだな、ということはお分かりになると思います。

では具体的にはどのようなことをする活動かというと、以下のようになります。

それぞれの活動はお互いを補完するものであり、いずれにも取り組むことで効果が発揮されます。

  • 業務プロセスの構造理解
  • 業務プロセスの目標と実績の管理
  • 部門を超えた社内での共有・コラボレーション

業務プロセスの構造理解

業務プロセスの構造理解は、業務プロセスのつながりや、関係性、どのようなルールで運営されているのか、また使用するシステムやその設計はどうなっているのか、といった内容が理解できるような状況にする活動を指します。

ERP導入プロジェクトの中ではスイムレーンは業務プロセスを作成することで業務の流れを理解できるようにしますが、まさにああいった可視化の活動を指します。

業務プロセスの構造がきちんと把握されていないと、そもそもどこに課題があるのかの特定が出来ない、という点はすでに触れたとおりです。

業務プロセスの目標と実績の管理

業務プロセスの目標と実績の管理は、業務を遂行する際に適切な目標や、KPIを設定して、その目標の達成状況を管理するという活動です。

こうした目標と実績の対比を行うことは課題の特定とその原因分析の際に役立ちますし、優先順位を設定する際にも役立ちます。

部門を超えた社内での共有・コラボレーション

部門を超えた社内での共有・コラボレーションは、部門や役職を超えて、業務プロセスの関する認識を整合させ、一丸となってより良い業務プロセスにしていくための活動を指します。

ここでのポイントは、特定の部門内だけに閉じた形で活動を終止させるのではなく、全社的な活動に広げていき、より広範な領域で認識を整合させ、コラボレーションを促進していくことです。

それぞれの活動は補完的であり、いずれにも取り組むことで効果が発揮される

ここまでで述べてきた業務プロセス管理の構成要素3つですが、どれか一つに取り組んでいても効果は発揮されません。

例えば、そもそも業務プロセスの構造理解が不足していれば、適切な目標設定や実績情報の取得はできず、また社内での認識も合わないのでコラボレーションも進みません。

目標と実績が管理されていなかったら、今の業務は良いのか課題はどこにあるのか理解できませんので、議論もできずNext Actionに結び付きません。

また、特定の部門内に閉じた認識整合に終始していると、部分最適な思考に陥り、全体最適を狙った大きな活動につなげていくこともできません。

したがって、これらの3つの活動すべてに取り組むことが業務プロセス管理においては重要となります。

日本企業の業務プロセス管理の現在地点

この業務プロセス管理ですが、言葉にしてみると簡単に思えるのではないかと思います。

読者の皆様の中には、そんなことはすでに十分にできている企業が大半なのではないか、と思われる方もいらっしゃるかと思います。

日本企業で勤務されている方々は非常に優秀で、まじめですから、業務プロセスの構造理解はもちろんしている、目標と実績はもちろん管理している、社内で共有もしている、という風に思いたいところなのですが、実際は大きく異なります。

構造理解は頭の中だけ、可視化・文書化はされず、あっても古いまたは限定的

自社の業務プロセスについてしっかりと理解している、という方は多いかもしれませんが、それをきちんと可視化しているか、文書などに整理するという活動を継続的に実施しているかというと、良い回答を得られない企業は非常に多いという状況が実態です。

ごく稀に業務プロセスについてまとめた文書がある場合でも、数年前のERP導入プロジェクトの際に作成したもので、今もその通りの業務になっているかは調べてみないとわからない、または業務プロセスというよりもシステムのデータ処理の流れだけに着目したものになっていて、その処理の目的や意味が理解できない、という限定的な情報しか記述されていないというケースにもよく遭遇します。

目標と実績は管理しているが、より適切な目標へのシフトや検討が行われていない

目標と実績については管理されている企業が多く、これ自体は非常に喜ばしいことなのですが、ある時点から目標がまったく変わらずにいるというケースが多く散見されます。

過去に設定した目標がそのまま使われ続け、実績は常に目標をクリアしているので何も問題はないものとしてそれ以上のアクションが何も発生しない状態が続いてしまっている、という状況です。

ビジネスの状況変化に応じて目標とすべき指標などは変化させ、より望ましい状態を目指して努力をすることが必要なのですが、そうした改善アクションが過去のある時点から完全にストップしてしまっている、という企業は非常に多いのではないでしょうか。

自部門のこと以外には関心が無い

個人的にはこれが最も大きな問題であると感じています。

日本企業は古くから階層型、機能別の組織を取り、部門間の壁が高く、部門を超えた情報共有や連携がしにくい体制でした。そうした体制はいつしか企業文化、従業員のマインドセットとなってしまい、自部門の、自分の担当領域のことはしっかりやるが、それ以外のことは知らない、責任は負わない、という考えが一般的となってしまっています。

こうした考えによって、さらに部門間の壁は高くなり、全体最適から遠ざかっていっている、というのが現状である企業がほぼ大半を占めると考えられます。

なぜ日本ではBPMが浸透していないのか

日本では業務プロセス管理があまりうまくいっていないということはお伝えした通りですが、それには原因があります。

理由は、主に2つです。

終身雇用が前提で暗黙知継承のスタイルが基本だった

日本では長らく終身雇用が基本でした。このような運営が基本であると、仕事のやり方や、業務の流れといったものは文書に整理しなくとも、一緒に働く仲間の中でなんとなく共有され、暗黙知的に理解できるようになっていきます。

これこそが現場の強さ、現場と経営の乖離、などにもつながっているわけですが、こうした運営が続いていたため、業務プロセスをほかの誰かが見ても理解できるようにフローとして文書にまとめておく、ということが実施されずにいました。

かつてのように、市場の変化のスピードがそこまで早くない時代では頻繁に業務プロセスを整備しておく必要性もなかったため、業務プロセスについては暗黙知の継承だけで十分に現場の作業は継続出来ていました。

したがって、業務プロセスを文書などに整理する必要性が感じられず、そもそも作業として認識されてこなかった、というのが現在、多くの日本企業で業務プロセスの管理が進んでいない理由の一つです。

業務プロセスの整理は外部のシステム屋さんがやってくれる

日本ではIT導入はシステムベンダーやコンサルティングファームを活用するのが基本であり、社内の情報システム部門が自分たちで開発作業を行うことはほぼない、という事実をご存じでしょうか。

欧米では製造業などでもIT部門は花形であり、自社業務をIT化していくのは当然ながら自社のIT部門が主導する、開発も自分たちでやる、というのが一般的なのですが、日本ではIT部門は外部の専門業者が導入したITサービスやツールを管理する立場、という認識が今も強い状況です。

これには1990年代のIT革命時、日本がバブル崩壊の影響で不景気にあったことが背景として存在します。ITへの対応は必要と考えられていたものの、自社の人員を増やし、IT担当として育成する時間もコストもとれない、という状況が多かった日本企業は、その時点で外部の業者を活用してIT導入だけは進めておく、という選択をします。

導入後も、保守運用は外部のベンダーに任せきりにする企業は多く、こうしたシステム化の中で外部のベンダーは業務プロセスの整理をするのですが、いつしか日本企業にとって、業務プロセスの整理は外部のシステム屋さんがやってくれるものであり、自社で定期的に行うものではないという認識が根付いてしまいます。

これも、多くの日本企業で業務プロセスの管理が進んでいない理由の一つです。

今やらないと業務プロセスがさらに分からなくなる

多くの日本企業が、業務プロセス管理がうまく出来ていないということをお伝えしてきましたが、こうした状況に加えて、業務プロセス管理の重要性は増してきており、企業は今すぐにでも業務プロセス管理に取り掛からないと致命的な事態を迎えてしまいます。

現在は変化の時代であることは冒頭にてお伝えした通りですが、かつてないほどに業務プロセスも多様化しています。

従来は人間が実施していた業務がロボットに代替され、自動化されるようなケースも目立っていますし、自社の人員だけで実施してきた業務が外部の協力者、サプライヤーあるいは顧客も巻き込んだ形態で行われることも一般的になってきました。

使用するシステムも新たな技術がどんどん出てくるため、きちんと整理しておかないと自社の誰も自社の業務をわからないという事態に陥ってしまいます。

ある日突然、自社の業務がわかるようには当然ながらなりませんし、手をこまねいている間に事態はどんどん複雑化しますので、今できていないのであれば今すぐにでも取り掛かるべき、というのが今、日本企業が業務プロセス管理に取り組むべき背景であり、SAP Signavioという業務プロセス管理のツールが登場した理由となっています。

SAP Signavioは業務プロセス管理のサイクルすべてをカバーし、継続的な取り組みを支援する

ここまでで、SAP Signavioのお話の前に業務プロセス管理とは何か、なぜ今日本企業にとって業務プロセス管理が必要なのかをご紹介してきました。

「今から業務プロセス管理をやろう!」と思っても、実際には何かしらの仕組みが必要です。それが、SAP社の提供するSAP Signavioです。

SAP Signavioは、業務プロセス管理において必要とされる以下要素のすべてをカバーし、業務プロセス管理を単発的なプロジェクト型の活動ではなく、継続的に取り組むべき活動として企業に定着させることを目的としています。

  • 業務プロセスの構造理解
  • 業務プロセスの目標と実績の管理
  • 部門を超えた社内での共有・コラボレーション

ここで改めて、SAP Signavioが持つモジュール別の機能を簡単にご紹介します。

  • SAP Signavio Process Manager
    • 業務プロセスのフローを記述する
  • SAP Signavio Process Governance
    • 業務プロセスの承認管理をする
  • SAP Signavio Process Collaboration Hub
    • 業務プロセスを部門横断で共有する
  • SAP Signavio Process Automation
    • 業務プロセスを自動化する
  • SAP Signavio Process Insights
    • 業務プロセスの実行状況を監視する(指標を表示する)
  • SAP Signavio Process Intelligence
    • 業務プロセスの実行状況を監視する(タスクレベル)
  • SAP Signavio Journey Modeler
    • 顧客体験、従業員体験を起点に業務プロセスの変革活動を描く

すべてのモジュールを導入することは必ずしも必須ではありませんが、業務プロセス管理は継続的に実施していくことが重要であり、構造理解、目標と実績の管理、そして共有・コラボレーションに取り組む必要があるという観点でいうと、Process Manager、Process Insights、Process Collaboration Hubが比較的優先度高く活用していくべきモジュールとなる認識でいます。

終わりに

いかがでしたでしょうか。今回は、SAP Signavioそのもののご紹介の前に、業務プロセス管理とは何か、その必要性、なぜ日本企業ではうまくいっていないのか、という点について述べてきました。

これから業務プロセス管理に取り組もうとされている方や、業務プロセス管理のプロジェクトに関与されるかもしれないコンサルタントの方にとって、少しでも参考になりましたらうれしいです。

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