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元M&Aアドバイザリーの学び直し – コストアプローチの進め方

さて、基本的なアプローチとして3種類あります、というお話を振り返りました。
今回は、その中でもコストアプローチに分類される手法について、書いていきたいと思います。

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  • インカムアプローチ

コストアプローチ、その中でも使用される方法

以前の投稿でも記載をしておりますが、コストアプローチには、さらに2つの方法があります。何だったかというと、以下の2つです。

  • 簿価純資産法:BS(バランスシート/貸借対照表の数値、つまり簿価を用いる)
    もともといくらかかったんだっけ?いくらで買ったんだっけ?という方法
  • 時価純資産法: BS(資産、負債を時価評価して、足し引きする)
    今の時価っていくらなんだっけ?今買い替えるとしたらいくらなんだっけ?という方法

実は、よく使われる方法はこの2つのどちらでもありません。(そう書けばよかったのですが、失念・・・)では、何が使用されるのかというと、修正純資産法という方法になります。
こちらの説明に移る前に、簿価純資産法と時価純資産法のイメージについてお話します。

簿価純資産法と時価純資産法

コストアプローチは、企業あるいは事業の持っている資産、負債を出発点として価値評価を行っていきます。そこでまずはじめに参照するドキュメントは、BS(バランスシート/貸借対照表)となります。以下に、具体例として日産自動車様の連結BSを貼っています。 (ウェブページからだれでもDL可能)

左に資産(Asset)、右に負債(Debt)と純資産(Equity)がありますね。

この連結BSの値を、簿価といいます。(帳簿上の価額、という意味ですね)
この金額をそのまま使用し、純資産を算出する(というか読み取るだけ)方法が、簿価純資産法となります。

簿価純資産法による企業価値・事業価値の求め方

企業価値 あるいは事業価値
=資産合計(簿価) - 負債合計(簿価) = 純資産合計(簿価)

企業の場合は企業が持っている資産、負債すべてに着目しますが、事業の場合はその事業に関係する資産、負債を特定して、価値算定の際に対象とする、というイメージです。(どれがどの事業の資産なのか切り分けが大変、という結構めんどくさい話もあるのですが、それはまた後述)

M&Aを進めるときは、その時点で一番新しいBSを確認し、M&Aが実行されるタイミングではどのようにBSの各種数値が動くか予想し、計算をすることとなります。
予想とはいっても、以下のようにある程度決まった論点を経営者に確認し、確認した結果を反映するという作業になるので、難しい予測モデルを使っている、というわけではありません。

  • 有形固定資産を売却する予定があるか
    (例:現金を対価として売却するのであれば、有形固定資産を現金に振り替える)
  • 長期借入金を返済する予定があるか
    (例:当座預金を用いて返済するのであれば、当座預金で長期借入金を打ち消す)
  • 販売予定から考えて棚卸商品や売掛金はどの程度あるか
    (例:それぞれの回転日数で予想を立てる)
    などなど・・・

簿価純資産法で算定した価格は、セルサイドのケースでは「せめて簿価以上で売りたい」という 経営者の目線になることが多い感覚です。

さて、この簿価純資産法で算出した企業価値、あるいは事業価値ですが、当然のことながら資産によっては簿価の金額と市場などで買ったときの時価が異なるケースがあります。
そこで、簿価ではなく時価を使用する方法が、時価純資産法となります。

時価純資産法による企業価値、事業価値の求め方

企業価値 あるいは事業価値
=資産合計(時価) - 負債合計(時価) = 純資産合計(時価)

M&Aをした場合は、買い手企業は取得した資産、引き継ぐこととなった負債を時価でBSに計上することとなります。そのため、価格を算定するときは簿価を使用するよりも、時価を使用して計算した方法のほうが望ましい、というのも至極当然です。

したがって、簿価で計上されている資産や負債をすべて時価に直し、資産合計から負債合計を差し引くことで純資産を求める、という方法が時価純資産法となります。

しかし、ここで問題になってくるのが、すべての資産、負債を時価に直すなんでことが現実的に可能なのか?ということです。
上に貼ってある日産自動車様の例でいえば、原材料や棚卸資産を部品から車体やエンジンまで事細かに分類し、それぞれの時価を一つ一つ求めていくのか?というと、それはやはり不可能になります。 ここで登場するのが、冒頭でお話ししている修正純資産法となります。

修正純資産法とは

簿価純資産法ではちょっと価格に納得感が出にくい。かといって、すべての項目を時価に直すような時間もない、こんな時に使用するのが、修正純資産法です。
ざっくりいうと、簿価と時価で大きな違いがありそうなものだけは、時価に直して計算する、そしてそれ以外は簿価をそのまま使う、という方法になります。

簿価純資産法と、時価純資産法のあいだをとっているようなイメージですね。

実際、コストアプローチで価格算定しましたーとなったら、ほぼこの方法だと思っています。
よっぽど、時価と簿価で違いがない業態、業種の企業でなければ、簿価純資産法を使用することはないイメージです。

今回はここまで。次回は、本投稿で記載した修正純資産法について、もう少し深堀りをしていきたいと思います。実際に修正純資産法を行うときに、どんな項目が時価評価しなおす対象になるのか、といった点を整理していきます。

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